メッセージ配信アカウントの構築・メルマガ配信代行の契約

構築と配信の代行で積み上がるのは、登録者の一覧です。そのデータが誰のものか、誰が同意を取るかを、契約で先に決めます。

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受託者の名義でアカウントを作ると、契約が終わった日に、発注者は登録者へ連絡する手段を失います。

このページの要点

  • 登録者の一覧と紐づく情報は発注者に帰属させ、終了時の引渡しの範囲・形式・期限と、受託者の手元の削除・報告を決める。
  • 配信の同意・同意の記録・送信者の表示・停止の受付を、段階ごとに誰が担当するかを分ける。責任は配信を依頼した発注者に残る。
  • メニュー画面、段階配信、原稿の権利は構築物の権利として決め、配信用の画像やバナーを対象に含めるかも書く。
  • 未払いのとき止めてよいのは受託者の作業。発注者の名義のアカウント、登録者のデータ、配信停止の受付は止めない。

結論:登録者のデータは誰のものか、誰が同意を取るか、契約が終わったとき何を渡すかを決める

公式のメッセージ配信アカウントの構築と、メールマガジンの配信を代行する契約は、広告運用代行と並んで、集客支援の中でもよく結ばれる契約です。成果物は見えにくく、仕事の大半はサービスの管理画面の中で行われ、積み上がるのは「登録者」や「読者」と呼ばれる登録者の一覧です。ここでは、特定のサービス名には触れず、一般的な情報として、契約書で押さえておきたい論点を整理します。このページは、条文と一般的な実務の整理です。結論は次の3点です。

  1. 登録者の一覧と、そこに紐づく情報(氏名、メールアドレス、識別子、タグ、購入や閲覧の履歴)は、発注者が事業のために集めたものとして発注者に帰属させ、終了時に渡す範囲と形式と期限を決める。
  2. 配信の同意の取得、同意の記録、配信者の表示、配信停止の受付の4つについて、発注者と受託者のどちらが担当するかを分けて書く。法律上の責任は、契約でどう分けても、配信を依頼した発注者に残る。
  3. アカウントの名義と管理者の権限は発注者に置き、受託者には作業に必要な権限だけを付与する。報酬が払われないときに止めてよいのは受託者の作業であり、発注者のアカウントや登録者のデータ、配信停止の受付ではない。

広告アカウントの名義と終了時の引継ぎの一般的な考え方は広告アカウントの名義と終了時の引継ぎ、構築物の権利は制作物の権利と実績公開、配信の文面に含まれる表示の責任は広告表示の責任分担で扱っています。ここでは、メッセージやメールの配信に特有の部分に絞ります。フォーム送信や郵送のダイレクトメールによる営業の代行は別のページで扱っています。

構築と配信代行は、仕事の性質が違う

この種の契約には、性質の違う仕事が混ざっています。アカウントの開設と初期設定、メニュー画面の設計、登録時の自動応答、段階配信(登録からの日数や行動に応じて決まったメッセージを順に送る仕組み)の設計と実装は、何を作るかが決まる構築の仕事です。日々の配信の予約や、メールマガジンの原稿の入稿と配信、効果の集計と報告は、続ける作業の仕事です。構築は完成を約束する請負(民法632条)の性質に近く、運用は事務を続ける準委任(民法656条、643条)の性質に近い、という違いがあります。契約書では、業務ごとに分けて、報酬の発生の時期、完成の確認の方法、責任の範囲を書き分けます。この考え方は契約の型と業務範囲で詳しく取り上げています。

構築と配信代行で、契約書に分けて書きたいこと
業務性質契約で決めること
アカウントの開設・初期設定、メニュー画面、自動応答の設計と実装構築(完成を確認する)納品の確認の方法(テスト配信、画面の確認)、確認期間、修正の回数、納品の時点の定義
段階配信のシナリオ設計、タグの設計、フォームの設置構築+設計の助言何通のメッセージを何日分作るか、文面を誰が書くか、タグの分け方を誰が決めるか
日々の配信の予約、メールマガジンの入稿と配信運用(作業を続ける)月に何通まで、入稿の締切、配信の承認の手順、配信日時の変更の受付
効果の集計と報告運用報告の項目、頻度、数値の出どころ(サービスの管理画面)と、計測のずれの扱い
配信用の画像、バナー、動画の制作制作(別の契約になりやすい)含めるか含めないか。含めないなら、発注者が用意するのか、別途の見積りなのか

作業を細かく列挙できるほど、「どこまでが月額に含まれるのか」の争いが減る。

配信用のバナーや画像素材の制作を対象外にし、必要なら発注者が用意するか、別途の見積りとする書き方があります。構築の費用に画像の制作が含まれていると思っていた発注者と、含めていなかった受託者のずれは、よくある争いの一つです。配信の文面(メッセージの本文)を誰が書くのかも、同じように書いておきます。文面を受託者が書くなら、表示の内容の責任は発注者にあること、受託者は法令への適合を保証しないことを、あわせて書きます(広告表示の責任分担)。

配信の対象となる人からの問合せや、応募者の対応を誰が行うのかも決めます。メッセージ配信アカウントは、配信するだけでなく、登録者からの返信を受ける窓口にもなります。受託者の業務を「配信の設計と実装」に限るなら、個別の返信、応募者や顧客への対応、苦情の対応は発注者が行うと書きます。この線を引いておかないと、返信への対応が追加の作業として、いつの間にか受託者の負担になります。

登録者・読者のデータは誰のものか、終了時にどう引き継ぐか

登録者の一覧は、事業にとって最も価値のある資産です。そこで、契約が終わったときに、その一覧が誰の手元に残るのかを、契約書で決める必要があります。考え方の基本は、登録者は発注者の事業のために集められた人であり、そのデータは発注者の事業の資産だ、というものです。受託者が自分の名義でアカウントを作り、そこに登録者を集めてしまうと、契約が終わったとき、発注者は登録者に連絡する手段を失います。

データの種類ごとの帰属と、終了時の扱い(一般的な考え方)
データ・資産帰属の考え方終了時の扱い
登録者の一覧(識別子、登録日、表示名など)発注者発注者が自分で管理できる状態にする。出力できる形式(表計算のファイルなど)と、出力する範囲は、サービスの仕様に左右されるので、契約で「出せるもの」を特定する
登録者に紐づく情報(氏名、メールアドレス、アンケートの回答、タグ、購入や閲覧の履歴)発注者(個人情報として、発注者が責任を負う)受託者の手元に複製を残さない。返還または削除し、完了を報告する
配信の履歴、開封や反応の数値発注者終了時の引渡しの対象に入れる。サービスの管理画面から出せないものは、画面の記録(スクリーンショット)などで代える
シナリオの設計図、メッセージの原稿、テンプレート契約で決める(構築物の権利)発注者に渡すか、使用を許諾するか。受託者が他の案件でも使う汎用の部分は、受託者に残す
受託者が独自に持つ集計の様式、ノウハウ受託者発注者が使えるのは、契約で許諾された範囲

出力できる範囲は、サービスの仕様や、アカウントの種類(無料か有料か)によって異なるため、「契約時点で、何が出力できるのか」を確認してから書く。

登録者の情報の多くは、個人情報(特定の個人を識別できる情報)です。メッセージ配信のサービスで集めた氏名やメールアドレス、購入の履歴は、発注者が個人情報取扱事業者として管理する個人データに当たり得ます。発注者が受託者に個人データの取扱いを委託するときは、委託先に対して必要かつ適切な監督を行わなければなりません(個人情報保護法25条)。委託に伴う提供は、本人の同意を得ない第三者への提供の制限の対象外ですが(同法27条5項1号)、これは、委託の範囲内で、委託元の目的の達成に必要な範囲で取り扱う場合に限ります。個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じる義務もあります(同法23条)。

契約書には、次の事項を書きます。受託者が個人データを取り扱う目的を、構築と配信の業務に限ること。目的外に利用せず、第三者に提供しないこと。取扱いの状況を発注者が確認できること(報告を求める、確認する)。事故が起きたときの連絡の期限。受託者が管理者の権限を持つ場合の、アカウントの認証情報の管理(二段階認証の設定、共有しない)。終了時の返還または復元できない形での削除と、完了の報告。登録者から集めるときに、何の目的で使うかを伝えること(利用目的の特定と通知・公表。同法17条、21条)は発注者の役割です。たとえば、新商品の案内に使う目的で集めた登録者に、まったく別の事業の宣伝を送ることは、目的外の利用になり得ます(同法18条1項)。

条文例登録者のデータの帰属と終了時の引継ぎ(一般的な条文の例)

  1. 本件アカウントに登録された者の一覧、及び登録者に関して取得した情報(以下「登録者データ」という。)は、発注者に帰属する。受託者は、登録者データを、本契約の業務の遂行の目的にのみ使用し、自己又は第三者のために使用しない。
  2. 受託者は、本契約が終了したときは、終了日から○日以内に、登録者データのうち、サービスの機能により出力できるものを、発注者が指定する形式で発注者に引き渡す。出力できないものについては、発注者の求めに応じ、画面の記録その他の方法により、可能な範囲で提供する。
  3. 受託者は、前項の引渡しの後、受託者の管理する登録者データを遅滞なく削除し、削除した旨を書面又は電磁的方法で発注者に報告する。法令に基づき保存が必要なものは、この限りでない。
  4. 受託者が、本契約の遂行の過程で作成した配信用のシナリオ、メッセージの原稿、画面の設計図は、発注者が代金を支払った範囲で、発注者が自己の事業のために使用できる。受託者が従前から有していた汎用のテンプレート及びノウハウの権利は、受託者に留保される。

空欄の期間は、サービスの仕様と発注者の業務に合わせて決めます。出力できる範囲を契約の時点で確認しておくと、終了時の争いが減ります。

配信の同意・表示・停止:特定電子メール法と特定商取引法

広告や宣伝のメッセージを、受け取る人の同意なしに配信してよいかは、配信の手段によって適用される法律が変わります。まず、メールで広告を送る場合の法律が、特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(特定電子メール法)です。この法律の「特定電子メール」は、営利目的の団体や営業を営む個人が、自己または他人の営業につき広告または宣伝を行うための手段として送信する電子メールで(2条2号)、「電子メール」の通信方式は総務省令で定められています(同条1号)。その方式は、全部または一部でシンプルメールトランスファープロトコル(いわゆるメールの転送の方式)が用いられるもの、携帯して使用する通信端末機器に電話番号を送受信のために用いて通信文その他の情報を伝達するもの(いわゆるショートメッセージ)の二つです。定義の読み方は、郵送やフォーム送信の場合を含めてフォーム営業・DM・手紙営業の代行契約で整理しています。

この定義は、サービスの仕組みによって、法律の適用の有無が変わり得ることを意味します。メールマガジンの配信は、通常は前者の方式に当たるので、特定電子メール法の対象です。電話番号を宛先にするショートメッセージも、対象です。他方、メッセージ配信サービスのアプリの中だけで完結するメッセージが、この法律の「電子メール」に当たるかどうかは、そのサービスの通信の仕組みによります。契約書では、法律の適用の有無を受託者が断定して保証するのではなく、「メールやショートメッセージによる配信は同法の規律に従い、アプリ内のメッセージについても、同じ水準の同意の取得、表示、停止の受付を行う」と、運用の水準を書くのが現実的です。

配信の規律と、契約で決めること
規律根拠(現行)契約で決めること
あらかじめの同意(オプトイン)。特定電子メールは、次の者以外に送ってはならない:送信を求める旨または同意する旨を通知した者、書面で自己のメールアドレスを通知した者、取引関係にある者、アドレスを公表している団体や営業を営む個人特定電子メール法3条1項同意を取る場面(登録時、フォーム)と、同意の文言を誰が作るか。取引関係にある者に送る範囲を、発注者がどう限るか
同意の記録の保存。送信を求めた、同意したことを証する記録を保存する同法3条2項、施行規則4条記録を誰が持つか。同意を受け取った日時、方法、メールアドレスを特定できる形で保存する。記録の保存期間は、送信をした場合、原則として最後に送信した日から1か月を経過する日までと定められている(措置命令を受けた場合は延びる)
表示の義務。送信者(送信を委託した者がいる場合は、送信に責任を有する者)の氏名または名称、配信停止を受け付ける連絡先などを表示する同法4条、施行規則7条配信の文面のひな形に、誰が表示事項を入れるか。送信者の名称は発注者か受託者か
配信停止の申出の後の送信禁止。送らないよう求められたときは、その意思に反して特定電子メールを送ってはならない同法3条3項停止の申出を誰が受け付け、何営業日以内に配信の対象から外すか。受付の窓口と、反映のフロー
通信販売の広告メッセージ。商品や役務を通信販売するときは、承諾を得ないで電子メール広告をしてはならない(請求に基づく場合などを除く)。承諾の記録の保存、停止の意思表示に必要な事項の表示も必要特定商取引法12条の3第1項から4項発注者が通信販売をしているか。していれば、承諾の取得、記録、表示を誰が行うか
措置命令の対象。送信を委託した者が、同意の通知の受領や記録の保存などの業務の一部を行い、責めに帰すべき事由があるときは、送信者と並んで命令の対象になり得る特定電子メール法7条発注者が配信の依頼者としての責任を負うことを前提に、受託者への指示の範囲と記録の保管を決める

表の条文は現行の規定です。適用の有無は、配信の手段と、発注者の事業の内容によって変わります。

表の下から2つ目の特定商取引法12条の3は、通信販売の広告に使われるメッセージについての規律です。「電子メール広告」は、広告に係る通信文その他の情報を電磁的方法により送信し、相手方の使用する電子計算機の映像面に表示されるようにする方法による広告と定義されていて(同条1項かっこ書)、メールの方式に限りません。発注者が商品や役務を通信販売しているなら、メッセージ配信サービスで送る広告も、承諾を得ないで送れない広告になり得ます。承諾の取得、記録の作成と保存、停止の意思表示に必要な事項の表示の業務のすべてを一括して他の者に委託したときは、委託先に同様の義務が課され(同法12条の4)、そのときは委託元の義務の一部が適用されません(12条の3第5項)。業務の一部だけを委託しても、この特例には当たりません。契約書に、同意の取得から記録、表示までを誰が受け持つのかを書くのは、このためでもあります。

同意から配信停止までの流れ(役割を決める場所)

  1. 登録・同意登録の画面やフォームに、配信する内容、送信者の名称、停止の方法を表示し、同意を取る
  2. 記録同意を受け取った日時、方法、宛先を特定できる形で保存する
  3. 配信文面に、送信者の名称と停止の方法を表示する。同意のない人、停止を申し出た人を対象から外す
  4. 停止の受付申出を受け付けたら、速やかに配信の対象から外し、その人にだけ送らない設定を反映する
  5. 確認停止した人への誤送信がないか、定期的に確かめる

5つの場所のうち、どれを発注者が、どれを受託者が担当するかを契約書に書く。受託者が担当する部分も、発注者は結果を確認できるようにしておく。

役割の分担の書き方で最も大切なのは、受託者が担当する範囲でも、発注者が配信の依頼者であることに変わりはない、という前提を忘れないことです。受託者が同意の取得の文言を作り、記録を保存し、停止を反映する業務を担当する契約でも、同意のない人へ送ったと指摘されたとき、まず説明を求められるのは配信を依頼した発注者です。そこで契約には、受託者が行った業務の記録を、発注者がいつでも確認できること、法令に違反するおそれがある配信の依頼を、受託者が止められることを書いておきます。止められる権限があることは、受託者の責任を免除する書き方ではなく、受託者が違法な配信に加担しないための歯止めです。

メニュー画面・段階配信などの構築物の権利

アカウントの中に作られたメニュー画面(画面の下部に表示される、メニュー形式のボタン)、段階配信のシナリオ、タグの設計、フォームの設定、メッセージの原稿は、構築物として契約の対象になります。権利の考え方は、制作物の一般的な整理(制作物の権利と実績公開)と同じです。ただし、この種の構築物は、サービスの管理画面の中に作られるため、契約が終わったとき、画面の設定そのものを持ち出せるのか、設計図や原稿の形で渡すのかを分けて考える必要があります。

  • 画面の設定そのもの:発注者のアカウントの中にあるので、アカウントの名義が発注者であれば、契約が終わっても発注者の手元に残る。受託者のアカウントで作ると、持ち出せない。
  • 設計図、シナリオの一覧、原稿:ファイルの形で納品物に含めるかを決める。含めるなら、納品の時点と形式(文書、表計算のファイル)を書く。
  • 文章や画像の著作権:文面を受託者が書いた場合、著作権は書いた側に残るのが原則。発注者が自分の事業で使い続けられるよう、利用の許諾の範囲(期間、媒体、改変の可否)を書く。譲渡する場合の翻案権などの特掲は、制作物の権利のページで説明している。
  • 汎用のテンプレートとノウハウ:受託者が複数の案件で使うシナリオの型や設計の考え方は、受託者に残す。発注者に見せる範囲と、他社への開示の禁止を決める。
  • 配信用の画像、バナー:契約の対象に含めるかを決める。含めないなら、素材の権利の確認(画像の利用許諾)は発注者の責任とする。

権利の話で見落とされやすいのが、サービスの運営者が定める利用規約の存在です。アカウントの譲渡や、アカウントの共同管理、第三者への配信業務の委託が、サービスの利用規約で制限されていることがあります。契約書に「本サービスの利用規約を、受託者と発注者の双方が守る」と書き、利用規約の変更によって機能が使えなくなったときは、受託者が責任を負わない(ただし代替の案を提案する)、と定めておくと、運営者側の事情による争いを減らせます。

誤配信・誤送信と、配信ミスの責任

配信の仕事で最も怖いのは、取り消せないことです。送信したメッセージは、受け取った人の画面に届いた時点で、原則として取り下げが難しくなります。契約書では、誤配信をどう防ぎ、起きたときにどう責任を分けるかを書きます。

誤配信の類型と、責任の分け方の考え方
類型例責任の分け方の考え方
宛先の誤り別のセグメント(絞り込み)に送った、停止した人に送った受託者がセグメントを設定した場合は、受託者の作業の誤り。発注者の指示どおりに設定した場合は、指示の内容の誤りとして発注者の責任が重くなる
内容の誤り価格の誤記、期限の誤り、別の商品の案内原稿の作成者と、承認した人で分ける。承認の記録(チャットやメール)が残っているか
日時の誤り予約の日時の入力ミス、重複配信予約を入れた人の責任。配信前の確認の手順を決めておくと争いが減る
個人情報を含む誤配信別の人の氏名や購入内容を、本人以外に見せた個人データの漏えいに当たり得る。発覚時の連絡の期限、調査、再発の防止策、本人への通知の役割を決める
サービス側の障害配信が遅延した、届かなかったサービスの運営者の障害は受託者の責任とせず、代替の手段の提案と、発注者への速やかな連絡を受託者の義務とする

責任の上限の考え方は、外部パートナーとの契約・賠償上限に整理がある。

誤配信を防ぐ仕組みとして、配信前の確認の手順を契約書に書く方法があります。具体的には、テスト配信を発注者の担当者に送り、文面と宛先を確認してから本番の配信に進むこと、原稿の最終の承認者を決めて、承認の記録を残すこと、予約配信の締切を配信日の何営業日前とするのかを決めること、緊急の停止の連絡先と、停止の判断をする人を決めることです。配信の承認を「発注者が黙っていたら承認したものとみなす」と書く契約もありますが、配信の内容は広告表示の責任に直結するため、公開の可否を黙示の承認に任せない書き方を勧めます(広告表示の責任分担)。

誤配信が起きたとき、損害として何が請求できるかも決めておきます。誤配信による損害は、金額で測りにくいものが中心です。受け取った人からの苦情への対応の費用、お詫びの送付の費用、配信の停止による機会の損失、信用の低下などです。賠償の範囲を直接かつ通常の損害に限り、賠償額の上限を直近の報酬の一定期間分とし、故意や重大な過失、個人データの漏えいは上限の外に置く、といった定めを置く設計が考えられます(上限の比べ方は外部パートナーとの契約)。民法415条は、債務を履行しなかったときの損害賠償を定めていて、債務者の責めに帰することができない事由によるときは責任を負わないとしています。誤配信が受託者の責めに帰することができない事由(サービスの障害、発注者の指示の誤り)によるときは、責任を負わない、と契約で確認しておくと、争いを減らせます。

アカウントの管理者権限と、未払いのときに止めてよいもの

メッセージ配信のアカウントでも、課金の主体、管理者の権限、作業の権限をそれぞれ別に書く点は、広告アカウントと同じです。名義を発注者にそろえ、受託者には作業に必要な範囲の権限だけを付与し、二段階認証を使い、担当者が変わったとき・契約が終わったときの権限の削除は発注者が行う、という考え方は広告アカウントの名義と終了時の引継ぎで整理しています。配信アカウントに特有の点は、次の二つです。

  • 配信の通数に応じた従量の費用:誰が払うか、上限を決めるか、上限を超えそうなときに誰が連絡するかを決める(広告費の負担と精算の考え方と同じ)。受託者が有料のオプションや上位のプランを、発注者の承諾なく申し込まないとも書く。
  • 配信停止の受付:報酬の未払いがあっても、停止の申出の受付と、停止した人への送信の防止は維持する。これは法令上の対応で、報酬の交渉の材料にしない。

報酬が払われないときに受託者が止めてよいのは、新規の配信の設計や原稿の作成、予約の入力、効果の集計と報告など、受託者自身の作業です。催告の期間を置いたうえで止めると書きます。発注者の名義のアカウントへのアクセス、登録者のデータや認証情報の引渡し、配信停止の受付までを止めると、発注者の事業が止まり、登録者への連絡手段も失われます。報酬の保護は、前払い、支払遅延時の業務の停止、期限の利益の喪失の条で行います。止めてよいものと止めてはいけないものの線引きは広告アカウントの名義と終了時の引継ぎ、支払遅延時の停止の定め方は契約期間と中途解約・支払遅延時の配信停止にあります。

終了時には、権限の削除、認証情報の変更、登録者データの引渡しと削除、進行中の予約配信の扱い(取り消すのか、完了させるのか)を、順序を決めて行います。予約配信が残ったまま権限がなくなると、終了後に受託者の名前で配信が出てしまうことがあります。終了日の前に予約の一覧を発注者と確認し、完了させるものと取り消すものを分けておく手順を、契約に添付する別紙に書いておくと分かりやすくなります。契約期間と中途解約の一般的な整理は契約期間と中途解約で扱っています。LINEなどのSNSアカウントへの投稿の運用そのものを代行に任せる場合の、投稿本数の数え方や承認の流れは、SNS運用代行の契約書の投稿本数と承認フローの記事で詳しく説明しています。

起きがちなことと、契約書での備え

契約前に確かめたいこと

  • 構築の業務と配信代行の業務を分け、納品の確認の方法、月に配信できる通数、入稿の締切を書いたか。
  • 配信用の画像、バナー、動画の制作と、配信の文面の作成者を決めたか。
  • 登録者データの帰属、終了時に引き渡す範囲・形式・期限、受託者の手元のデータの削除と報告を書いたか。
  • 個人データの取扱いの目的、目的外の利用と第三者への提供の禁止、事故の連絡、認証情報の管理を書いたか。
  • 配信の同意、記録、送信者の表示、停止の受付の担当を、段階ごとに分けて書いたか。
  • 発注者が通信販売をしている場合の、広告メッセージの承諾の取得と記録の担当を決めたか。
  • アカウントの名義、課金の主体、管理者の権限、受託者の作業の権限を分けて書いたか。
  • 未払いのとき受託者が止めてよいものと、止めないもの(登録者データ、アカウント、停止の受付)を書いたか。
  • 誤配信を防ぐ手順(テスト配信、承認者、予約の締切)と、責任の分け方・上限を決めたか。

よくあるご質問

登録者や読者の一覧は、構築を依頼した会社のものですか、受託者のものですか?

考え方の基本は、登録者は発注者の事業のために集められた人であり、データは発注者の資産です。受託者の名義でアカウントを作ると、契約が終わったとき連絡する手段を失います。契約書には、帰属、終了時に渡す範囲と形式と期限、受託者の手元の削除と報告を書きます。出力できる範囲はサービスの仕様に左右されるので、契約時点で確認します。

メルマガや広告のメッセージを配信するとき、同意は必要ですか?

メールやショートメッセージによる広告宣伝の配信は、特定電子メール法の対象で、あらかじめ送信を求めた、または同意した人など一定の者にしか送れず(3条1項)、同意の記録を保存し(同条2項)、配信停止の申出の後は送れません(同条3項)。通信販売の広告メッセージには、特定商取引法12条の3の規律もあります。アプリ内のメッセージの適用は仕組みによるため、同じ水準の運用を契約で定めておく方法があります。

同意の取得や停止の受付を、構築の受託者に任せてよいですか?

業務として任せることはできますが、配信を依頼した発注者の責任は残ります。特定電子メール法は、送信を委託した者が業務の一部を行い、責めに帰すべき事由があるとき、命令の対象になり得ると定めています(7条)。任せる場合も、業務の記録を発注者が確認できることと、違法のおそれのある配信を受託者が止められることを、契約に書いておきます。

報酬が払われないときに、配信を止めたりアカウントを渡さなかったりしてよいですか?

受託者の作業(新規の設計、原稿の作成、予約の入力)を、催告の後に止める定めは置けます。一方、発注者の名義のアカウントへのアクセス、登録者のデータの引渡し、配信停止の受付を止めると、発注者の事業と登録者の権利に影響が大きいため、止められるものから外す書き方が現実的です。報酬の保護は、前払いと支払遅延時の業務の停止の条で行います。

誤配信が起きたとき、受託者はどこまで責任を負いますか?

契約で決めます。配信前のテスト配信、承認者、予約の締切といった手順を書き、誰の作業や指示の誤りかで責任を分けるのが一般的です。賠償の範囲を直接かつ通常の損害に限り、直近の報酬の一定期間分を上限とし、故意・重大な過失・個人データの漏えいは上限の外に置く例が多く見られます。サービスの運営者側の障害は受託者の責めに帰することができない事由として整理します(民法415条1項ただし書)。

あわせて読みたいページ

本ページは一般的な情報提供です。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月22日)。参考: e-Gov法令検索 / 特定商取引法ガイド(消費者庁) / 表示対策(消費者庁) / フリーランス法特設サイト(公正取引委員会)

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