アフィリエイト広告の規約と契約

アフィリエイターが書いた広告でも、広告主の表示として扱われる場面があります。規約は、禁止事項の一覧ではなく、確認・是正・報酬の止め方を備えた仕組みとして書きます。

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「広告内容はアフィリエイターの責任」と規約に書いてあっても、問題の広告が出たとき、まず責任を問われるのは広告主です。

このページの要点

  • 検討会報告書・運用基準・管理措置の指針はいずれも、アフィリエイト広告の表示について、まず広告主が責任を負うことを前提にしている。
  • 指針の措置(確認・共有・保存・是正)を、規約の条項に落とす。違反時の報酬停止・返還・解除は、重大な違反に限り上限を置いて書く。
  • 禁止事項は、指名での出稿、無断のクローズドな集客、誇大な効果の表示などを具体的に挙げる。広告の表示は「必要に応じて」でなく常時にする。
  • 成果の否認事由は列挙し、通知の理由と異議の手続を置く。セルフバックの可否、個人への支払条件を決め、二段階以上の紹介報酬は入れない。

結論:アフィリエイトの規約は「広告主の表示」を前提に、確認・是正・報酬の止め方を書く

アフィリエイト広告は、広告主(商品やサービスを供給する事業者)が、ブログ、比較サイト、SNSなどを運営するアフィリエイターに広告の掲載を任せ、購入や申込みなどの成果に応じて報酬を払う仕組みです。広告主とアフィリエイターの間に、両者をつなぐ事業者(ASP=アフィリエイトサービスプロバイダー)が入ることも多く、広告主が直接アフィリエイターと契約する場合と、ASPを通じて契約する場合があります。

アフィリエイト広告の登場者とお金の流れ

  1. 広告主商品・サービスを供給する。成果の条件と報酬の額を決め、成果を承認し、報酬の原資を払う。
  2. ASPアフィリエイターを募り、広告主との提携を仲介する。成果の計測と、報酬の支払の窓口を担うことが多い。
  3. アフィリエイター自分のサイトやSNSに広告を載せる。個人の場合もある。
  4. 消費者広告を見て、リンクから購入や申込みをする。成果として計測される。

広告の表示は広告主から消費者へ、報酬は成果の承認を経て広告主から(ASPを通じて)アフィリエイターへ流れます。

この仕組みの規約や契約で、最初に押さえておく結論は一つです。アフィリエイターが書いた広告であっても、広告主の表示として扱われる場面があり、その場合の責任はまず広告主が負う、という前提で規約を組むことです。消費者庁の検討会報告書、ステマ告示の運用基準、景品表示法の管理措置の指針のいずれも、この前提に立っています。禁止事項を並べるだけの規約は、前提を満たしません。表示の内容をどう確認し、問題があればどう是正させ、報酬をどう止めるか、という一連の流れを、規約や契約の条項として書く必要があります。

このページが扱うのは、広告主がアフィリエイターに課す規約と契約です。表示責任の分担の一般論は広告表示の責任分担、報酬の型と成果の定義は報酬・手数料の決め方、口コミの依頼と報酬はMEO・SEO・口コミの契約、成果の確定とクーリング・オフ期間の関係は営業代行・クロージング委託にあります。税金に関する扱いはこのページでは扱いません。

広告主が負う表示の責任:三つの公表資料が言っていること

アフィリエイト広告の表示責任について、規約の設計の土台になる公表資料は三つあります。いずれも消費者庁が公表したもので、原文を確認できたものだけを整理します。

アフィリエイト広告に関する三つの公表資料
資料アフィリエイトについて述べていること規約への影響
アフィリエイト広告等に関する検討会報告書(令和4年2月15日公表)アフィリエイト広告の表示内容については、ASPやアフィリエイターにも一定の責任はあり得るが、まずは「表示内容の決定に関与した事業者」とされる広告主が責任を負うべき主体であるとする。広告主が、アフィリエイターが作ったものだとして責任を取らない事例があることも指摘する。規約で「アフィリエイターの責任であり広告主は責任を負わない」と書いても、広告主の責任は消えない。責任を前提に管理を書く。
「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準(令和5年3月28日)事業者がアフィリエイトプログラムを用いて、アフィリエイターに委託して自らの商品について表示させる場合は、事業者が表示内容の決定に関与したものとして、事業者の表示になり得るとする。一方、広告主とアフィリエイターの間で、その表示に係る情報のやり取りが直接にも間接にも一切ないなど、広告主による広告とは認められない実態の表示は、事業者の表示とならない。提携したアフィリエイターへの指示・確認の内容が、広告主の表示になるかどうかの判断材料になる。やり取りの記録を残す。
事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針(平成26年内閣府告示第276号。令和6年4月18日の改正を含む)景品表示法22条1項の措置として、アフィリエイトプログラムを利用した広告では、表示の作成を委ねる場合の確認、情報の共有、指示・確認権限の確認、資料の保管、不当表示が明らかになったときの是正と報酬停止などを、具体例として示す。規約の条項を、指針の措置に沿って組み立てられる。

景品表示法22条1項は、事業者に、不当な表示を防止するために必要な体制の整備その他の措置を講ずることを求めており、同条2項に基づいて内閣総理大臣が指針を定めるとされています。指針の別添は、アフィリエイトの広告について、広告主が直接アフィリエイターと契約する場合と、ASPを通じて契約する場合があるため、管理上の措置の実効性を確保するには、表示の作成を委ねる契約書で、どの主体が何を行うか、役割分担と責任の所在をあらかじめ明記するなどの対応を考えられる、と述べています。つまり、規約や契約書そのものが、指針に沿った管理措置の一部になります。

アフィリエイター自身の責任にも触れておきます。検討会報告書は、不当なアフィリエイト広告の多くが健康食品と化粧品に集中していることを踏まえ、「何人も」と規制対象を限定していない健康増進法65条や薬機法66条を、ASPやアフィリエイターへの措置に活用すべきだとしています。景品表示法の名宛人である広告主だけでなく、アフィリエイターも、健康食品や化粧品の効果の表示では、自ら規制の対象になり得るという意味です。さらに、検討会報告書は、広告主と連携共同して通信販売を行い、一体となって事業活動を行っていると認められる場合は、ASPやアフィリエイターなどについても、景品表示法上の供給主体と認めて適用する必要があるとしています。規約では、アフィリエイターに、これらの法令を守る義務を負わせることが、広告主の責任を軽くするのではなく、広告主の管理を支える条項になります。

通信販売の広告には、特定商取引法12条(誇大広告等の禁止)も関わります。同条は、通信販売をする販売業者又は役務提供事業者が、商品の性能や役務の内容などについて、著しく事実に相違する表示をし、又は実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させる表示をしてはならないと定めています。

管理措置を規約の条項にする:確認・共有・保管・是正・報酬の停止

指針が挙げる措置を、規約や契約のどの条項に落とすかを、対応表にします。指針の本文と別添の具体例を、広告主の側で規約に書く言葉に直したものです。

指針の措置と、規約に置く条項の対応
指針の措置規約に置く条項書き方のポイント
景品表示法の考え方の周知・啓発(第4の1)ガイドラインの交付と、確認の義務禁止表現と必要な表示を、規約とは別のガイドラインにまとめ、提携時に交付して確認を取る。
法令遵守の方針等の明確化(第4の2)遵守事項と、違反したときの措置の明示不当表示を行わないこと、違反時に成果報酬の支払停止や契約解除があることを、あらかじめ書く。
表示に関する情報の確認(第4の3)事前確認、又は掲載後の確認全件の事前確認が難しければ、掲載後なるべく早く確認する、成果報酬の額や頻度が高いアフィリエイターを重点的に確認する、ASPに確認を委託する、といった定めにする。
表示に関する情報の共有(第4の4)表示の方針と根拠情報の共有、相談の窓口表示の根拠となる情報を事前に共有する。全部が難しければ、方針についての相談を受け付ける体制を置く。
表示の管理担当者(第4の5)指示・確認権限の確認広告主が、自社の広告として、指示・確認の権限を持つことを、アフィリエイターとの間で確認する条項を置く。
根拠情報を事後的に確認する措置(第4の6)表示内容と資料の保存掲載した内容と、やり取りの記録を、誰が、いつまで保存するかを決める。保存期間は、指針の例では、広告のリンクから購入できなくなるまでの期間に、商品・役務の特徴に応じた合理的な期間を加えたものとされる。
不当表示が明らかになったときの対応(第4の7)削除・修正の義務、報酬の停止・返還、提携の解除迅速に削除・修正できる体制を置き、成果報酬の支払停止、支払済み報酬の返還、提携契約の解除といった措置を、契約であらかじめ取り決める。

指針の第4の各項と別添の例示を、広告主の側から規約の言葉に直したものです。

条文例表示の確認と是正(広告主の側の規約の例)

  1. アフィリエイターは、本プログラムの広告を掲載するときは、広告主が交付する表示ガイドラインに従い、広告主が示す表示の根拠となる情報の範囲を超えた表現をしてはならない。
  2. 広告主は、アフィリエイターの掲載内容を、掲載前又は掲載後に確認することができ、必要な修正又は削除を求めることができる。アフィリエイターは、求めを受けたときは、速やかに、広告主が指定する期限までに、これに応じなければならない。
  3. アフィリエイターは、掲載した表示の内容及び広告主とのやり取りの記録を、本プログラムの終了後も、広告主が指定する期間保存し、広告主の求めに応じて提出する。
  4. アフィリエイターが前各項又は法令に違反したときは、広告主は、当該違反に係る成果報酬の支払を停止し、既に支払った成果報酬の返還を求め、又は本契約を解除することができる。
  5. 広告主は、本プログラムの広告について、指示及び確認の権限を有する。アフィリエイターは、これを確認する。

ASPを通じて提携する場合は、確認・保存・是正の各項で、広告主とASPのどちらが何を行うかを、条ごとに書き分けます。

最後の条項群にあたる違反時の措置は、どこまで書くかに注意が要ります。報酬の停止と返還は、指針も例に挙げている措置です。他方で、違反の場合に既払報酬の全額を違約金とし、実際の損害も請求できる、という書き方は、重ねがけになりやすく、争いになりやすい書き方です。

書き方の例(一般的な例) 違約金と広告の変更・停止の書き方

違約金の範囲

よくある書き方違反した場合、既払報酬の全額を違約金とし、そのうえで実際の損害も請求できる。
整えた書き方違約金が生じる違反を重大なものに限り、上限を置き、違約金と損害賠償を一本化する。

民法420条(賠償額の予定)、90条(公序良俗)、独占禁止法の優越的地位の濫用(2条9項5号・19条)の観点から、重ねがけにならないよう整理します。広告主の側からも、報酬の返還と違約金の関係を、段階を分けて書いておくと、実際に報酬を止めるときの争いが減ります。

広告の変更・停止

よくある書き方ブランドイメージを著しく毀損するおそれがあるなどの場合に、広告の変更や停止を求められるが、これによる補償の定めがない。
整えた書き方変更や停止を求められる場合を限定し、変更・停止に伴う費用や、すでに発生した成果の扱いを定める。

変更や停止を求める権限は、不当表示への迅速な対応にも使えます。どのような場合に求められるのか、求められた側の費用や、すでに発生した成果をどう扱うのかが書かれていないと、求められる側の予測可能性がなくなります。

禁止する出稿方法・表現:何を書けば、確認と是正に使えるか

アフィリエイトの規約の中心になるのが、禁止事項です。検討会報告書には、広告主やASPが実際に設けている禁止事項の例が、業種別に整理されています。そこから、規約に書ける類型を、禁止の目的別に拾います。

禁止事項の類型と、目的
類型検討会報告書に例のある禁止事項規約で禁止する目的
出稿の方法事業者名やサービス名称でのリスティング広告。未登録のサイトでの活動。広告主に無断で、メールマガジンやSNS、会員制サイトなどのクローズドな環境で集客すること。広告主が見えない形での出稿をなくし、確認の対象に入れる。指名での出稿は、公式サイトの流入と成果を奪う問題にもなる。
表現の内容誇大な広告、薬機法の範囲を逸脱した効用の記載、医療類似行為と誤認させる表現、「儲かる」「負けない」といった表現、デメリットの説明の極端な不足。不当表示を未然に防ぐ。効果の表示は、広告主が持つ根拠資料の範囲内に限る。
掲載してはならないもの店舗内の写真、出演するタレントの画像の無断使用、タレントが掲載された広告原稿の加工。権利や肖像の問題と、広告主が確認していない表現の混入を防ぐ。
勧誘の方法SNSで金銭目的の過剰な勧誘行為。モニター体験や覆面来店などで謝礼を支払うアフィリエイトサイトの運営。広告であることを隠した口コミの形と、利益と引き換えの投稿を防ぐ。
開示への協力広告主が集客方法の開示を求めたときに、開示できない、又は不明瞭であること(金融商品の例として挙がっている)。確認の実効性を確保する。開示に応じないことを、規約上の違反として扱えるようにする。

上の例は、検討会報告書が整理した、広告主やASPが設けている禁止事項の例です。個々の広告主の規約は、扱う商品に応じて内容が異なります。

表示の仕方についても、規約で書けることがあります。指針の別添は、アフィリエイトプログラムを利用した広告が事業者の表示であることを、一般消費者が認識できるように、広告主が、アフィリエイターに表示を求めるなどの対応を行うこととしています。望ましい文言として、「広告」という文言のように認識しやすい文言を使い、さらに事業者の具体的な名称などを記載すること、位置として、視野に最初に入る画面内に表示し、他の情報に埋もれず、事業者の商品の表示と近接させること、が挙げられています。運用基準が不明瞭とする例(文章の末尾に小さく置く、周囲より薄い色にする、大量のハッシュタグの中に埋もれさせるなど)は、そのまま禁止の例に使えます。

比較サイトの装いについては、運用基準に一つ注意点があります。複数の商品の価格や内容を比較するアフィリエイトサイトでは、サイト自体が事業者の表示であることが一般消費者にとって明瞭であれば、載せているすべての商品について個別に表示する必要はないとされています。逆に言えば、中立の比較サイトに見えて、実際には成果報酬を受けている広告のサイトであるのに、その旨が明瞭でないものは、事業者の表示であることを示す対象になります。規約では、比較・ランキング・体験談の形式をとるときも、広告であることをサイトの全体から明瞭に示すことを求め、順位の基準や報酬との関係を隠した「第三者の評価」を装うことを禁じる、という書き方ができます。

表示の要否の判断も、規約で決めておく点です。広告表示を「必要に応じて」行うとするだけの書き方では、要否を誰が判断し、誰の責任で表記するのかが決まりません。アフィリエイトの規約では、「必要に応じて広告であることを明示する」とは書かず、アフィリエイターのサイトやSNSの投稿では、常に広告であることを明示する、と書く方が、判断の迷いが入る余地がなく、広告主の確認も楽になります。口コミ・体験談の依頼や、対価と引き換えの投稿の取扱いは、MEO・SEO・口コミの契約の考え方と共通です。

成果の承認と否認、セルフバック(自己購入)の扱い

アフィリエイトの規約で、特に争いになりやすいのが、成果を承認するか否認するかです。アフィリエイターから見れば、広告を掲載して成果が出たのに報酬が出ない、という不満になります。広告主から見れば、キャンセルや虚偽の申込みに報酬を払えない、ということになります。報酬の算定の一般論は報酬・手数料の決め方にあるので、ここでは規約に特有の組み立てだけを書きます。

成果の承認から報酬の支払まで

  1. 成果の発生リンクを経由した購入・申込み・来店などが計測される。この時点では「未承認」。
  2. 承認の期間キャンセルや返品が確定する期間を見て、承認までの期間を決める。
  3. 承認・否認の通知承認なら報酬の対象に、否認なら理由を通知する。
  4. 異議の申立て否認に異議があるときの、期限と、示す資料を決める。
  5. 支払・精算支払の基準額と時期を決める。承認後の取消しは、次回以降の報酬と相殺する。

検討会報告書には、広告主が成果を承認しない理由の例が、業種別に整理されています。化粧品では、オークションでの転売行為や偽名によるアフィリエイター本人の購入、連絡のつかないユーザーからの購入、虚偽・重複・返品・キャンセル・未払い・受取拒否、同一世帯や同一IPからの購入が挙がっています。健康食品では、広告主の既存会員による購入、初回のみで定期購入を解約または休止した場合、返品・キャンセルなど。サービスの申込みでは、報酬を目的としたアフィリエイター本人の申込み、1世帯2回以上の申込み、虚偽の内容、重複、いたずらなどです。これらの例から、規約の否認事由に使える類型は、次のように整理できます。

  • 取引が成立しなかったもの:キャンセル、返品、返金、未入金、受取拒否など。
  • 成果として数えられないもの:重複、虚偽、いたずら、入力の不備、連絡がつかないなど。
  • アフィリエイター側に起因するもの:本人や関係者による購入・申込み、禁止事項に違反した出稿・掲載。
  • 広告主の側の事情によるもの:既存の顧客からの申込み、定期購入の継続回数が条件に満たないなど、あらかじめ書いた成果の条件を満たさないもの。

規約では、否認事由をできるだけ具体的に列挙し、「その他広告主が不適切と認めたもの」という包括の否認だけに頼らないことが重要です。否認が広告主の裁量だけに委ねられていると、アフィリエイター側に不信が生まれるだけでなく、規約の条項そのものが、相手方の利益を一方的に害するものとして合意をしなかったものとみなされるおそれがあります。規約が不特定多数を相手方とする定型取引の約款(定型約款)に当たる場合、民法548条の2第2項は、相手方の権利を制限し、又は義務を加重する条項で、取引の態様や実情、取引上の社会通念に照らして、信義則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるものは、合意をしなかったものとみなすと定めています。定型約款に当たるかどうかは、取引の実態によります。

否認の手続も書いておきます。通知する理由、通知の期限、異議を申し立てる期間、異議のときにアフィリエイターが示す資料、広告主が再確認して回答する期間です。成果をいつ確定させるかは、商材の事情にも左右されます。返品や解約が起こり得る期間(クーリング・オフの期間など)が終わるまで承認しない、とする書き方は、営業代行の報酬の確定要件と共通の考え方です(営業代行・クロージング委託)。

セルフバック(アフィリエイターが自分のリンクから自分で購入や申込みをして、報酬を受け取ること)は、規約で扱いを決めておかないと、争いの種になります。広告主によって、禁止する、条件付きで認める、認めるのいずれもあり得ます。検討会報告書の否認例には、アフィリエイター本人の購入や申込みを承認しない例が複数あり、広告主がこれを禁止している実態が見えます。規約では、次のように整理して決めます。

セルフバックの扱いの選択肢
選択肢規約の書き方起きやすいこと
禁止するアフィリエイター本人、同一世帯、関係者による購入・申込みを、成果として認めない。判定のために、申込者の情報を確認できるとする。判定は広告主のデータが頼りで、否認の通知で争いになりやすい。否認事由に、本人・世帯・関係者を明記しておく。
条件付きで認める対象の商品、1回に限る、本人の名義と配送先に限る、キャンセル・返品がなく一定期間が経過した後に承認する、といった条件を書く。条件を満たさない申込みの扱いと、承認後に返品されたときの報酬の戻しを書いていないと、精算でもめる。
認める条件を設けずに認める。割引の代わりに使われ、広告としての意味が薄れる。報酬の原資との関係で、広告主の採算を確認する。

セルフバックを認める場合でも、アフィリエイター自身の購入を、第三者の体験談のように書いて掲載することは別の問題です。購入の事実を明らかにし、広告であることも示す必要があります。禁止事項の条項と、あわせて確認してください。

個人のアフィリエイターへの報酬の支払条件と、多段の紹介報酬を入れない設計

アフィリエイターは、法人の場合も個人の場合もあります。個人に対して報酬を払う規約では、支払条件を具体的に書いておく必要があります。決める項目は、次のとおりです。

個人のアフィリエイターへの支払条件で決める項目

  • 支払の基準額(一定額に達するまで翌月以降に繰り越すか)。
  • 締め日と支払日、振込手数料の負担者。
  • 報酬の金額が、税込か税別か。
  • 支払先の口座の名義が、登録者本人であることの確認。
  • 承認後に取り消された成果の精算の方法(次回以降の報酬との相殺か、返還か)。
  • 調査中の成果や、禁止事項の違反が疑われる成果の、支払の保留と、その期間の上限。
  • 規約に同意した時点と、報酬の条件を適用する時点。

相手方が事業として活動する個人(個人事業主)で、従業員を使用しない場合は、フリーランス法が関わり得ます。広告主が、事業のために、他の事業者に広告掲載という役務の提供を委託する関係は、同法の「業務委託」(2条3項2号)に当たり得るからです。業務委託事業者は、直ちに、給付の内容、報酬の額、支払期日などを、書面又は電磁的方法で明示する義務を負います(3条1項)。規約や申込み画面で、成果の条件と報酬の額、支払の時期を明示することは、この義務と整合します。従業員を使用する事業者が発注者の場合は、報酬の支払期日が、役務の提供を受けた日から60日以内でなければならない(4条1項)という規律もあります。成果の承認を待つ期間が長すぎる設計は、この点で、問題が生じないか確認します。ASPを通じて提携する場合は、契約の相手方がASPになるので、誰が業務委託事業者に当たるかも、契約の形から確認が必要です。個人が事業としてではなく、趣味のブログなどで参加している場合は、事業者に当たらないため、同法の対象ではありません。

規約は、多数のアフィリエイターに同じ内容で適用するため、あとから変更する場面が出てきます。規約が定型約款に当たる場合、変更は、相手方の一般の利益に適合するとき、又は、契約をした目的に反せず、変更の必要性、変更後の内容の相当性、変更することがある旨の定めの有無・内容などに照らして合理的なときに、個別の合意なくすることができます(民法548条の4第1項)。変更するときは、効力発生時期を定め、変更する旨と変更後の内容、効力発生時期を、インターネットなどの適切な方法で周知しなければならず、合理性を根拠とする変更は、効力発生時期までに周知しなければ、効力を生じません(同条2項・3項)。禁止事項や成果の条件を後から厳しくする変更は、特に周知の方法と時期に気をつけます。

最後に、報酬の設計で入れてはいけないものがあります。アフィリエイターが、別のアフィリエイターを勧誘して、その人の成果の一部を自分の報酬として受け取るという、二段階以上の紹介報酬です。特定商取引法33条1項は、物品の販売や役務の提供の事業で、再販売、受託販売、販売のあっせんをする者を、特定利益(その後に加わる者の取引料などの利益)を収受し得ることをもって誘引し、特定負担(商品の購入、対価の支払、取引料の提供)を伴う取引をするものを「連鎖販売業」と定義しています。アフィリエイトの規約に、他のアフィリエイターを紹介した者への報酬を入れ、加入に費用や商品の購入が伴うと、この定義に近づきます。多段階の紹介報酬の判断は別のガイドで扱いますが、広告の掲載を任せる目的のアフィリエイト規約では、紹介報酬を一段階に限り、アフィリエイターを勧誘させる仕組みを規約に持ち込まない設計が、安全です。

起きがちなことと、規約での備え

規約と契約は、管理の仕組みとして動いてはじめて意味を持ちます。表示の責任の分担は広告表示の責任分担、成果の算定は報酬・手数料の決め方、起用する側の発注契約はインフルエンサー・専門家を起用する広告の発注契約もあわせてご覧ください。

よくあるご質問

アフィリエイターが勝手に書いた広告でも、広告主が責任を問われますか?

消費者庁の検討会報告書は、アフィリエイト広告の表示内容については、まずは表示内容の決定に関与した事業者とされる広告主が責任を負うべき主体であるとしています。運用基準も、アフィリエイターに委託して自らの商品について表示させる場合を、事業者の表示になり得る場合に挙げています。一方、広告主とアフィリエイターの間で表示に関する情報のやり取りが一切ないなど、広告主による広告とは認められない実態の表示は、事業者の表示になりません。

規約に「広告内容はアフィリエイターが責任を負う」と書けば、広告主は免責されますか?

契約で当事者間の費用や損害の負担を決めることはできますが、景品表示法上の責任の所在を契約で変えることはできません。検討会報告書も、責任を取ろうとしない広告主がいる実態を問題として指摘しています。広告主は、確認、情報の共有、保存、是正といった管理措置を、規約の条項として置く必要があります。

成果を否認できるのは、どんな場合ですか?

規約や契約に書いた否認事由に該当する場合です。検討会報告書には、キャンセル、返品、重複、虚偽、いたずら、連絡のつかない申込み、アフィリエイター本人の購入、広告主の既存会員による購入などが、広告主の否認例として整理されています。規約では、否認事由をできるだけ具体的に書き、通知の理由、異議の期間、示す資料を決めておくと、争いを減らせます。

セルフバック(自己購入)は認めてよいですか?

可否は、広告主の設計と規約の定めによります。消費者庁の検討会報告書の否認例には、アフィリエイター本人の購入や申込みを承認しない例が複数あります。禁止する、条件付きで認める、認めるの選択肢があります。認める場合は、対象の商品、回数、キャンセル・返品時の報酬の戻し、承認までの期間を決めておきます。禁止する場合は、本人・同一世帯・関係者の購入を、否認事由に明記します。

アフィリエイターに、他のアフィリエイターを紹介した報酬を払ってもよいですか?

二段階以上の紹介報酬は、特定商取引法33条1項の連鎖販売業の定義(特定利益と特定負担を伴う取引)に近づくおそれがあります。判断は取引の実態によるため、広告の掲載を任せる目的のアフィリエイト規約では、紹介報酬を一段階に限り、アフィリエイターを勧誘させる仕組みを持ち込まない設計をお勧めします。詳細は別のガイドで扱います。

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本ページは一般的な情報提供です。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月22日)。参考: e-Gov法令検索 / 特定商取引法ガイド(消費者庁) / 表示対策(消費者庁) / フリーランス法特設サイト(公正取引委員会)

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