このページの要点
- 受託者が担う段階と、契約の締結の代理・決済の代行・値引きや返金の約束などしないことを具体的な行為で書く。
- 営業の対象・手法・使ってよい表現と禁止する表現を決める。訪問や電話による営業を事前承諾制にする例もある。
- 商談の録画は事前の説明と同意を条件とし、同意がなければ詳しい記録を残す。利用目的と保存期間を決める。
- 報酬の確定を決済の完了・クーリング・オフの期間の経過・返金がないことに連動させ、取消し時の相殺と通知を書く。
結論:「どこまで代わりにやるか」と「いつ報酬が確定するか」を決める
営業代行の契約は、見込み客への連絡から、商談、契約条件の説明、成約の意思の確認、契約後の管理まで、どの段階を受託者が担うかで中身が大きく変わります。事務所が作成・レビューした営業代行の契約書から言えることは、次の3点です。
- 受託者が担う段階を書き、契約の締結の代理・決済の代行・見積りの確定など、受託者がしないことも書く。
- 営業の対象・手法・使ってよい表現と禁止する表現を決める。
- 報酬が確定する時点を、決済の完了・クーリング・オフの期間の経過・返金がないことなどの要件で決め、取り消されたときの調整の方法を書く。
このページでは、営業代行会社がクライアントと結ぶ月額固定の契約、法人営業の成功報酬の委託、クラウドサービスの販売委託、オンラインスクールのクロージング(成約の担当)の委託を中心に紹介します。消費者に勧誘する場面の法律の整理は勧誘のルールと特定商取引法、助言だけのコンサルとの線引きは契約の型と業務範囲で扱います。紹介手数料の算定や紹介の帰属、中抜きの禁止は、姉妹サイトの代理店・フランチャイズの契約書ガイドで扱っているため、ここでは営業代行に固有の部分に絞ります。
営業代行の3つの型
事務所の書類に現れた営業代行は、報酬の決め方で3つの型に分けられます。
営業代行の型
月額固定・稼働日数型
営業代行会社がクライアントと結ぶ
- 準委任で、委託料は業務を適切に遂行すること自体の対価
- 稼働は原則9時〜18時、月12日を基準とし、超える場合は別に書面で決める
- 毎月の固定の委託料
成功報酬型
法人営業・販売委託
- イベントの契約は1件ごとの定額、定期の契約は顧客企業からの売上高の30%(委託者からの紹介なら15%)
- クラウドサービスの販売委託では、支払の方式(月払い・一括払い)ごとに料率を分ける
クロージング委託型
オンライン面談での成約担当
- Zoomなどでの面談、商品・契約条件・料金の説明、成約の意思の確認と決済の方法の案内
- 対象の成約の売上金額(実際に受け取った額)の10%
月額固定・稼働日数型は、営業代行会社(受託者の側の依頼)がクライアントと結ぶ契約です。準委任で成果物を完成させる義務はなく、委託料は「適切に業務を遂行すること自体に対する対価」と確認しています。営業の資料の作成と補助の業務は改訂で業務から外しました。稼働の時間と日数を書くのは、受託者にとっては「月額でどこまで働くか」の上限になるからです。ただし、時間や日数の書き方は、受託者が個人の場合に労働者と見られるかどうかにも関わるため、書き方の注意を外部パートナーとの契約で取り上げています。
成功報酬型の法人営業の委託(委託者の側)では、業務を営業活動全般のほか、資料の作成、顧客対応、契約の交渉、契約の管理、アフターフォローまで広く取っています。成功報酬の基礎の「売上高」は、顧客企業から委託者が受け取った総額(税別)から返金・キャンセル・割引などを引いた額と定義しました。契約書と請求書は委託者が作るので、受託者は顧客企業から申込みを受けたら、確定した見積書・企業の情報・担当者の情報を一定の日数内に委託者に出す流れです。
営業の対象・手法・表現を決める
営業を任せる側(委託者)にとっては、誰に、どんな方法で、どんな言葉で営業されるかが最大の関心事です。クラウド型のデータ分析サービスの新規顧客の獲得を営業代行企業に成功報酬で任せる販売委託契約(委託者の側)では、次のように決めています。
| 項目 | 定め |
|---|---|
| 地域と対象 | 販売地域は日本国内。営業の対象は「ECサイトを自社で運営する法人のみ」。ECのコンサル会社・広告代理店・マーケティング支援企業などへの営業は禁止 |
| 手法 | 訪問・オンライン・電話・メールから自由に選べる |
| 禁止する手法 | 第三者を介した代理店販売(事前の承諾がある場合を除く)、虚偽の広告、委託者の名称・ロゴ・商標の無断使用、「迷惑メール、大量架電、誇大広告」などの違法・不適切な手段 |
| 違反したとき | 即時の解除と損害賠償 |
対象を「自社でECを運営する法人」に限ると、サービスの利用者になり得る相手に営業が集まり、委託者の他の販売経路とぶつかり得る先への売り込みを防げます。手法を自由にしつつ禁止の手法を列挙する書き方は、営業代行企業の裁量を残しながら、委託者の評判を傷つける営業を防ぐ形です。この契約は、当初の案で顧客の情報の漏えいや秘密保持の違反などに定額の違約金を置いていましたが、改訂ですべて「実際に発生した損害額を基準として賠償」に改めています。
営業の表現を事前の承認制にする例もあります。採用支援のサービスの営業を個人に任せる契約では、委託者が事前に承認した資料・営業の文言・SNSの投稿・DMの文面の範囲でだけ営業でき、独自の資料を作ることを禁じ、「必ず」「絶対」「100%」などの断定的な表現、成果の保証、景品表示法・特定商取引法・職業安定法などへの違反を禁止しました。地盤調査・改良工事の営業を個人に任せる契約では、当初の「代理人又は従業員であるとの誤認を生じさせる表示・行為の禁止」を、改訂で「誤認を生じさせないよう適切な表示及び説明を行う」に改め、委託者の名義やロゴの使用を認めつつ、業務委託を受けた者であることを必要に応じて示すとしています。営業の相手から見て、話している相手が誰なのかが分かるようにする定めです。
講座商材の集客営業を受ける会社の契約(2024年)では、相手方の原案に、受託者は「いかなる目的であろうと甲の法定代理人または代理人ではないことを確認する」という条がありました。事務所は、ここでいう「代理人」がどのような意味で使われているのかを確かめるコメントを付け、修正版ではこの条項ごと削られています。営業代行の受託者が販売の代理権を持たないことを確かめたいなら、「契約の締結・条件の変更・値引き・返金の約束をする権限を持たない」というように、具体的な行為で書く方が誤解を生みません。
クロージング委託の条文:レビューから修正版へ
オンラインスクールの運営会社(委託者の側)から、Zoomでのクロージングを成果報酬で任せる営業業務委託契約の原案のレビューを受けました。報告書では、原案が、虚偽や誇大な説明・過度な勧誘の禁止、Zoomの録画の原則化、クーリング・オフの期間の経過と返金・取消しがないことを報酬確定の要件にしている点を評価したうえで、足りない点として次の7つを挙げました。
- 違反があったときの是正・改善の機会・業務停止・解除という段階的な手続がない。
- 報酬の改定を委託者の判断に委ね、改定の範囲・手続・異議・明細の開示がない。
- 秘密情報・個人情報の範囲・管理・漏えい時の報告・終了時の返却と消去がない。
- 競業と再委託の定めがない。
- 不可抗力の定めがない。
- 損害賠償の範囲と上限がない。
- 業務品質と成果に基づく業務停止・解除の条が、見出しだけで本文がない。
各条についても、「決済案内」「意思確認」が契約の締結や代理を含むのかが不明確なので、契約の締結や決済の代行は業務に含まれないと明記すること、マニュアル・FAQ・トークスクリプトの遵守を書くこと、録画できない場合の代わりの措置・保存の期間・第三者への提供・削除を書くこと、競業避止(例として6か月)、賠償の上限(例として直近3か月の報酬)を置くことを求めました。指摘を反映した修正版の業務の条と禁止行為の条は、次のとおりです。
条文例クロージング業務の範囲と禁止行為(修正版の構成を一般化した例)
- 乙は、Zoomその他のオンライン会議の方法による顧客との面談、甲の商品の内容・契約条件・料金の説明、成約の意思の確認及び甲の定める決済方法の案内(契約締結の代理又は決済の代行に該当する行為を除く。)並びに成約の報告及び対応履歴の記録を行う。乙は、甲の営業マニュアル、説明方針及びトークスクリプトに従う。
- 乙は、甲の書面による事前の承諾がない限り、対面による訪問営業又は電話を用いた営業活動を行ってはならない。
- 乙は、消費者契約法、特定商取引法その他の法令を遵守し、虚偽又は誇張した説明、不安・恐怖・焦燥感を過度にあおる心理的な圧力、「必ず」「絶対に効果がある」「確実に儲かる」その他の結果を保証する表現、顧客の意思表示を無視した勧誘の継続及び不利益な事実の隠蔽をしてはならない。
- 乙が前項に違反したときは、甲は、是正の勧告、警告、業務の停止又は契約の解除をすることができる。
訪問と電話を事前承諾制にしておくと、営業の方法によって変わり得る特定商取引法の取引類型を、委託者が把握できます(勧誘のルールと特定商取引法)。
修正版では、独立性の条も置きました。雇用ではないこと、指揮命令を受けないこと、遂行の方法・時間・手段は受託者が決めること、就業規則を適用しないことです。報告書では、条文でこう書いても、実態が指揮命令の下での労務の提供であれば雇用(労働契約)と判断され得る点に留意するよう添えています。競業避止は契約期間中と終了後6か月、同一・類似のオンラインスクール等の営業への関与を禁じ、合理的な範囲であることの確認の文言を付けました。再委託は書面の承諾制、損害賠償は直接・通常の損害に限り、受託者の責任は直近3か月の報酬の総額を上限(故意・重過失を除く)としています。
商談の録画と記録
オンラインのクロージングでは、後から「そんな説明は聞いていない」「強く勧められた」と言われたときの証拠が、録画と記録しかありません。一方で、顧客の顔や声、発言を記録するので、同意と保存のルールが必要です。修正版では、録画の条を次のように組み立てました。
面談の録画と記録の流れ(クロージング委託の修正版)
- 開始前の説明と同意面談は原則として録画する。開始前に、録画の目的・利用の範囲・保存の期間を説明し、同意を得た場合に限る
- 同意がないとき録画せず、日時・顧客の発言・説明した事項・成約の意思などを詳しく記録した面談の記録を作って提出する
- 利用と提供録画と記録の利用目的は品質の管理・社内の教育・紛争の防止に限る。第三者への提供は法令による場合か顧客の同意がある場合だけ
- 保存と削除保存は面談の日から6か月。経過後は復元できない方法で削除する
同意を得られない顧客もいるので、録画の代わりに詳しい記録を残す手順を置いたのが要点です。録画や記録の改ざんは、後で述べる業務品質の条で、是正を求め解除につなげる事由に入れています。利用目的を限定し、保存の期間を決めておくと、録画が個人情報として長く残り続けることも防げます。
報酬の確定要件・取消し時の調整・報酬の変更
クロージング委託の修正版は、報酬の対象を「対象成約」とし、次の4つをすべて満たすものに限りました。
報酬の対象となる成約の要件(クロージング委託の修正版)
- 申込みの手続と決済が完了したこと。
- 法令又は委託者が定めるクーリング・オフの期間が経過したこと。
- その期間内と支払の時点で、解約の申出・キャンセル・返金の請求・支払の停止などがないこと。
- 委託者の社内の審査で、契約が有効に成立したことを確認したこと。
報酬は対象成約の売上金額(税込みで、割引やポイントを適用した後に委託者が実際に受け取った額)の10%です。報酬が発生した後に返金やキャンセルで取り消された場合は、次回以降の報酬と相殺でき、相殺するときは、対象の契約・取消しの事由・相殺の額を書いた報告書を支払日までに通知します。報酬の明細書(件数、顧客名又は成約番号、金額、消費税相当額)も交付します。報酬体系の変更は原則1か月前の書面の通知とし、受託者が同意しない場合は通知から15日以内に異議を申し立てて解除できると定めました。原案のように報酬の改定を委託者の判断だけに委ねると、受託者は条件の悪化を受け入れるしかありません。
ほかの書類でも、確定の時点と変更の手続を決めています。
| 契約 | 成果の確定 | 取消し・変更の扱い |
|---|---|---|
| オンラインスクールのクロージング(委託者の側) | 決済の完了、クーリング・オフの期間の経過、取消しなどがないこと、社内の審査 | 取消し時は次回以降の報酬と相殺し、報告書で通知。変更は1か月前の通知、15日以内の異議で解除可 |
| 講座商材の集客営業(受託者の側と見られる) | 新規の申込みがあり、受講費の入金が委託者にあったとき | 入金後でもキャンセルで返金された場合は販売実績に計上しない |
| 法人営業の成功報酬(委託者の側) | 当初の版は契約が成立した月の末日締め。改訂で顧客企業からの申込みの日(契約の意思を表示した日)を締日に変更 | 売上高は返金・キャンセル・割引を控除した額 |
| クラウドサービスの販売委託(委託者の側) | 対象の顧客が利用契約を結び、料金の支払を始めたとき | 料金の未納・キャンセル時は支払を留保・拒否できる。報酬の計算の基準の変更は30日前の通知、10日以内に異議がなければ同意とみなす |
法人営業の成功報酬の委託で締日の起算点を変えたことには、実務上の意味があります。契約書を作るのが委託者なので、「契約が成立した月」を基準にすると、委託者の側の事務の進み具合で受託者の報酬の時期が変わってしまいます。申込みの日を基準にすれば、受託者の営業の成果がいつ出たかで締日が決まります。成約の後に受託者が出す資料の期限も、同じく申込みの日から数える形に改めました。
業務品質と解除・報告の義務
クロージング委託の原案では、業務品質と成果に基づく業務停止・解除の条が見出しだけで本文がなかったため、修正版で次の手続を置きました。
業務品質の不足から解除までの手続(クロージング委託の修正版)
- 事由禁止行為の違反、複数回の苦情、成約率が委託者の事前に示した基準値を継続的に著しく下回ること、録画・記録の改ざん等
- 是正の要求委託者が書面で是正を求める
- 是正計画受託者は7日以内に是正の計画を出す
- 解除是正が不十分なら解除できる。情報漏えい、重大な改ざん、故意・重過失による不適切な営業、反社会的勢力との関係は即時解除
段階を踏む手続にすると、「成約率が低い」という評価が委託者の一存で解除の理由にされることを防げます。基準値を事前に示しておくことを要件にしているので、受託者はどの水準を求められているかを知ったうえで業務ができます。これに対して、講座商材の集客営業の契約(相手方の原案)には、委託者が「乙の販売実績が芳しくないと甲が判断した場合」や「顧客の不満足の連絡が著しいと甲が判断した場合」に解除できるという条がありました。基準も手続もない解除事由は、受託者から見ると、いつ契約を切られるか分からない条です。
成功報酬の委託では、報告の義務も重要です。法人営業の成功報酬の委託は、進捗、顧客対応の経過、成約の見込み、問題点を、書面又は記録が残る電子的な方法で報告し、求められれば契約書の写し・発注書・請求書・入金を確認できる書類を添付し、虚偽の報告には損害賠償を求められると定めています。成約の後の更新についても、契約期間中に受託者の営業で成立した定期の契約が更新されれば更新の報酬(30%、紹介の場合は15%)を払い、契約の終了後に成立した契約や、終了前の契約の終了後の更新には払わない、と期間で線を引きました。
起きがちなことと、契約書での備え
営業代行の契約では、期間と解約、競業避止と賠償の上限も重要です。契約期間と中途解約、外部パートナー・競業避止・賠償上限、アポ獲得の段階はテレアポ代行の契約書をご覧ください。
よくあるご質問
営業代行の契約で、受託者に「しないこと」を書く必要はありますか?
あります。契約の締結の代理、決済の代行、条件の変更、値引きや返金の約束など、受託者がしてはならない行為を具体的に書きます。漠然と「代理人ではない」と書くより、行為で書く方が誤解を生みません。
成果報酬は、クーリング・オフの期間が過ぎてから払うべきですか?
取消しによる戻しの手続を減らすなら、決済の完了、クーリング・オフの期間の経過、解約や返金の請求がないことを報酬の確定の要件にするのが有効です。事務所の修正版では、これに社内の審査を加えた4つの要件を定めました。
営業代行の契約で禁止すべき表現は?
「必ず」「絶対に効果がある」「確実に儲かる」などの結果を保証する表現、虚偽や誇張、不安をあおる心理的な圧力、顧客の意思を無視した勧誘の継続、不利益な事実の隠蔽などです。事前に承認した資料や文言の範囲でだけ営業させる例もあります。
オンラインの商談を録画するときの同意は、どう取ればよいですか?
開始前に録画の目的・利用の範囲・保存の期間を説明し、同意を得た場合に限って録画します。同意がなければ録画せず、詳しい面談の記録を残します。利用目的と保存の期間、削除の方法も契約で決めておきます。
成約率が低い営業代行者との契約を解除できますか?
契約しだいです。基準値を事前に示し、書面での是正の要求、是正計画の提出、不十分な場合の解除という段階を定めておくと、解除の根拠がはっきりし、受託者にとっても予測ができます。
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