このページの要点
- 営業のために又は営業として締結する契約には、特商法の訪問販売・通信販売・電話勧誘販売の規定は適用されない(特商法26条1項1号)。
- 事業者であることは、表明保証に加えて事業の内容の記載や登記事項証明書などの提出で確かめる。
- 電話勧誘販売に当たれば、原則として書面の交付・禁止行為・書面受領から8日間のクーリング・オフがかかる(同法18条・19条・21条・24条)。
- 構築・運用だけを受けるなら、購入の勧誘をしないことを本文か対象外業務で明記する。
結論:相手は消費者か、誰が最初に連絡したか、どこで契約するか
集客支援や営業代行の契約書を作るとき、契約の当事者どうしの約束とは別に、営業の相手(お客様)との関係で法律がどうかかるかを確かめておく必要があります。特定商取引法(特商法)は、訪問販売・通信販売・電話勧誘販売などの取引の類型ごとに、書面の交付、禁止行為、クーリング・オフ(一定の期間内なら無条件で申込みの撤回や契約の解除ができる制度)を定めています。どの類型に当たるかは、次の3つで変わります。
- お客様が、営業のために又は営業として契約する事業者か、そうでない消費者か。
- 最初に連絡したのは売る側か、お客様か。売る側が電話をかけたのか、お客様に電話をかけさせたのか。
- 契約の申込みや締結がどこで行われたか(営業所以外の場所か、郵便やインターネットなどの方法か)。
このページでは、事務所が作成・レビューした書類から、受注者や営業代行者が勧誘にどう関わるかを契約でどう決めたかを紹介します。営業代行の契約の組み立ては営業代行の契約書、アポ獲得の契約はテレアポ代行の契約書で扱います。
事業者どうしの取引か、消費者との取引か
特商法の訪問販売・通信販売・電話勧誘販売の規定は、申込みをした者や購入者・役務の提供を受ける者が「営業のために若しくは営業として」締結する契約には適用されません(特商法26条1項1号)。消費者契約法でも、「消費者」は個人のうち事業として又は事業のために契約の当事者となる場合を除いたものをいいます(消費者契約法2条1項)。BtoBの集客支援や営業代行なら、原則としてこれらの規律の外ですが、相手方が本当に事業者として契約しているかは、契約書の一文だけでは決まりません。
経営・マーケティングのコンサルティング契約(受注者の側の依頼で、依頼者の原案をレビューし改訂版を起案)では、原案に「事業者として締結する」ことを確認する一文がありました。報告書では、この確認だけでは相手方の消費者性を排除できないと指摘しています。契約書に「事業者として締結する」と書いても、相手方が実際には事業を営んでいない個人であれば、消費者として扱われ得るからです。改訂版では、確認の方法を条文にしました。
条文例相手方の事業者性の確認(コンサル契約の改訂版の考え方)
- 乙は、甲に対し、乙が法人又は現に事業を営む個人であり、本契約を事業のために締結することを表明し、保証する。
- 乙は、事業の内容、屋号及び開業の時期を別紙に記載し、甲の求めに応じて、登記事項証明書、開業届の控えその他事業を営んでいることを示す資料を提出する。
- 甲は、前項の確認ができないときは、本業務の開始を留保し、又は本契約を解除することができる。
事務所の改訂版の条文を一般化した例です。
SNS運用支援の申込書と規約のレビューでも、顧客が事業者かどうかを確かめる手段が申込書にないことを指摘しました。報告書では、内製化の支援(顧客の社内で運用できるよう教える業務)が、外から見るとSNS運用の講座に近いことも挙げています。集客支援の事業者が個人の開業者や副業の方を顧客にするときは、事業者であることの申告と、それを確かめる資料の提出を申込みの手続に組み込んでおくと、後から「消費者だった」と主張される余地を小さくできます。
電話勧誘販売とWeb会議の個別相談
特商法の「電話勧誘販売」は、販売業者又は役務提供事業者が、電話をかけ、又は政令で定める方法により電話をかけさせ、その電話での勧誘によって、郵便等で申込みを受けたり契約を結んだりする取引をいいます(特商法2条3項)。「電話をかけさせ」る方法として政令が定めているのは、次の2つです(同法施行令2条)。
| 号 | 内容 |
|---|---|
| 1号 | 電話・郵便・電報・ファクシミリ・電磁的方法、ビラやパンフレットの配布、新聞・雑誌への広告、ラジオ・テレビ、ウェブページ等を利用して、契約の締結について勧誘をするためのものであることを告げずに、電話をかけることを要請すること |
| 2号 | 電話・郵便・電報・ファクシミリ・電磁的方法で、他の者に比べて著しく有利な条件で契約を締結できる旨を告げて、電話をかけることを要請すること(その前に事業に関して取引のあった者に要請する場合を除く) |
電話勧誘販売に当たると、原則として、勧誘に先立って事業者の名称・勧誘する者の氏名・商品や役務の種類・勧誘のための電話であることを告げる義務(同法16条)、申込みや契約の書面の交付(同法18条・19条)、不実のことを告げる行為などの禁止(同法21条)がかかり、お客様は書面を受け取った日から8日を経過するまでクーリング・オフができます(同法24条1項)。8日の期間は書面を受け取った日から数えるので、法定の書面を交付していなければ期間が進みません。
禁止行為の中身も、営業代行者に任せる場面で具体的に意識しておきたいところです。特商法21条1項は、商品や役務の種類・内容、価格、支払の時期と方法、提供の時期、申込みの撤回や解除に関する事項、顧客が契約を必要とする事情に関する事項などについて、不実のことを告げる行為を禁じています。同条2項は一部の事項について故意に事実を告げない行為を、3項は人を威迫して困惑させる行為を禁じています。オンラインスクールのクロージングの委託の修正版で、虚偽や誇張した説明、不安や焦りを過度にあおる圧力、不利益な事実の隠蔽を禁止行為に並べたのは、こうした規律と同じ方向の行為を、営業代行者との契約の上でも禁じておくものです。営業代行者が勧誘の言葉を選ぶ以上、何を言ってはいけないかを契約とマニュアルの両方に書いておく必要があります。
コンサルティング契約のレビューでは、Web会議の通話もここでいう「電話」に含まれ得るという整理を前提に、次のように説明しました。広告やLPで内容と価格を示し、相手方が自分から個別相談を申し込んで契約に進むなら、通信販売として整理される方向です。一方で、「無料相談」と案内して相手方を誘い、その場で初めて高額の契約を勧誘する流れは、電話勧誘販売とされるおそれがあります。Web会議での個別相談が電話勧誘販売に当たるかどうかは、誰が最初に連絡したか、勧誘の目的を告げていたかなど、事実の経過によって判断が分かれ得ます。
Web会議の個別相談の流れと、整理の方向(レビューの説明から)
広告・LPから自発的に申込み
通信販売として整理する方向
- 広告やLPで商品の内容と価格を示す
- 相手方が自分から個別相談を申し込み、契約に進む
- 通信販売の広告の表示の義務を確認する
「無料相談」から高額の勧誘
電話勧誘販売とされるおそれ
- 勧誘の目的を告げずに相談を申し込ませる
- その場で初めて高額の契約を勧誘する
- 書面の交付とクーリング・オフの規律がかかり得る
相手方が事業者
特商法のこれらの規定は原則として適用外
- 営業のために又は営業として契約する(特商法26条1項1号)
- 申告と資料で事業者であることを確かめる
- 消費者契約法の消費者にも当たらない
ヒヤリングの問いと理由Web会議の個別相談で営業する前に確かめること
相手方は事業者ですか、消費者ですか。どうやって確かめますか。
事業者どうしの契約なら特商法のこれらの規定は原則として適用されません。申告と資料で確かめる手続を決めておきます。
個別相談は、相手方からの申込みで始まりますか。売る側からの案内で始まりますか。
売る側が電話やメッセージで案内した商談、勧誘の目的を告げずに相談を申し込ませた商談は、電話勧誘販売に当たり得ます。商談ごとに、最初の連絡がどちらからだったかを記録します。
広告やLPで、商品の内容と価格を事前に示していますか。
内容と価格を示したうえで相手方が自分から申し込む流れなら、通信販売として整理する方向です。その場合は通信販売の広告の表示の義務を確認します。
電話勧誘販売に当たり得る場合、書面を誰が作り、誰が交付し、クーリング・オフを誰が説明しますか。
売る側(販売業者・役務提供事業者)の義務なので、営業を任せる場合も、売る側が書面と説明の体制を持ち、営業代行者との役割を契約に書きます。
営業代行会社の側から相手方の原案をレビューした報告書でも、営業代行会社が働きかけて始めたオンラインの商談とクロージングが電話勧誘販売に当たり得ることを指摘し、原案の「受託者は法令適合性を審査しない」という条は当事者の間の内部の分担にすぎず、お客様や行政に対する義務を免れる根拠にはならない、と説明しています。この点の詳しい整理は、姉妹サイトの代理店・フランチャイズの契約書ガイドで扱っています。
勧誘を「引き受けない」書き方:構築代行者の契約
MAツールでのローンチの構築・運用を個人で受ける方の契約では、受注者が講座の購入の勧誘をしないことを明記していました。依頼者から、条文を簡単にするためこの条を削りたいとの希望があり、事務所は削るなら別紙の対象外業務に移すよう回答しました。理由は次のとおりです。
ご相談と回答「購入の勧誘をしない」条を削りたいというご相談
受注者は勧誘をするつもりがないので、条文から削ってもよいですか。
発注者の講座の個別相談での勧誘は、発注者の電話勧誘販売(特商法2条3項、同法施行令2条の「電話をかけさせ」る方法)となり得て、氏名等の明示(同法16条)や不実告知の禁止(同法21条)などの規律を受けます。受注者が勧誘に関与していたと見られると、民法上の不法行為の責任(民法709条・719条)を問われるおそれもあります。勧誘を引き受けないことは受注者を守る定めなので、本文から削るなら、別紙の対象外業務に「購入の勧誘」を入れて残す案を示しました。
最終版では、顧客への対応は問合せへの返信と案内に限り、購入の勧誘をする義務はないこと、返金・解約・クーリング・オフ・苦情への対応の方針は発注者が事前に示すことを定めています。構築や運用を受ける側にとっては、発注者の販売の方法に巻き込まれないための線引きです。発注者の側から見ても、勧誘を誰が担うかが契約で決まっていれば、書面の交付や説明の体制を自分で整える必要があることがはっきりします。
訪問販売を伴う営業の委託
営業所以外の場所(お客様の自宅など)で契約の申込みを受けたり契約を結んだりすると、訪問販売になります(特商法2条1項1号)。訪問販売にも、不実のことを告げる行為などの禁止(同法6条)や、書面を受け取った日から8日間のクーリング・オフ(同法9条)があります。給湯器などの訪問点検の営業を個人に任せる契約(委託者の側)では、ネット広告・DM・テレアポで集めた見込み客への対応、無料点検の案内と日程の調整、訪問点検、修理・交換の提案までを委託しているため、勧誘のルールを厚く書いています。
| 項目 | 定め |
|---|---|
| 遵守 | 特定商取引法・消費者契約法・個人情報保護法等を守り、クーリング・オフの制度を含む適法な営業を徹底する |
| 禁止行為 | クーリング・オフの制度の説明を故意に省略し、又は顧客の取消権を妨げる行為。威迫、誇張した表現、不実の告知、利益の誇張、不利益な事実の秘匿、しつこい勧誘 |
| 即時解除 | 不実の告知、重要な事項の不告知、クーリング・オフの妨害 |
| 直接取引の禁止 | 受託者が顧客から修理・交換を個人的に請け負うことや、委託者を通さず顧客と契約・営業することの禁止 |
| 報酬 | 月額固定+契約1件ごとの定額+獲得した契約の売上の10% |
報酬に契約の件数と売上の連動がある営業では、受託者には件数を増やす動機が強く働きます。禁止行為の列挙と即時解除の事由に、クーリング・オフの説明の省略や妨害を入れておくと、その動機が勧誘の誤りに向かうことへの歯止めになります。また、個人の顧客の情報の安全管理として、書類の保管、端末のパスワードとアクセスの制限、シュレッダー等による廃棄の方法、漏えい時の報告と調査報告書、終了時の返還・廃棄も定めています。
新聞の購読の訪問営業を出来高制で任せる契約では、報酬の対象の「成果」を、顧客が署名・捺印した購読の申込書を提出し、新聞社が受理し、かつ「契約取消期間」を経過した状態と定義しました。報酬の確定を訪問販売のクーリング・オフの期間の経過に連動させる設計で、取り消された契約に報酬を払った後で返還を求める手間をなくしています。この契約では、お客様と契約を結ぶ権限は原則として委託者にあり、委託者の書面の承諾があるときに限って受託者に与えられ、委託者はいつでも撤回できる、とも定めています。訪問販売で書面を交付し、クーリング・オフに対応するのは売る側(販売業者)なので、営業員がその場でどこまでの手続をしてよいかを、権限の条で区切っておく形です。虚偽の契約や書類の偽造のような重大な不正には定額の違約金を置き、虚偽の契約に対して払った報酬は返還させる定めもあります。オンラインスクールのクロージングの委託でも、クーリング・オフの期間の経過を報酬の確定の要件に入れ、あわせて訪問営業と電話による営業を委託者の事前の承諾制にしました(営業代行の契約書)。
BtoBの営業でも決めておく手法の制限
事業者が相手の営業なら特商法の多くの規定は適用されませんが、営業の手法が委託者の評判や他の法律に関わることに変わりはありません。事務所の書類では、BtoBの営業でも次のような手法の制限を置いています。
- クラウドサービスの販売委託:「迷惑メール、大量架電、誇大広告」などの違法・不適切な手段、虚偽の広告、名称・ロゴ・商標の無断使用を禁止。
- BtoBのテレマーケティング:特定商取引法・消費者契約法・電気通信事業法等の遵守、架電を断った企業・個人の記録と再架電の禁止、適法に取得したリストであることの確認。
- 法人営業の成功報酬の委託:進捗・顧客対応の経過・問題点の報告と、求めに応じた契約書の写しなどの添付。
営業手紙の発送を代行するサービス(AIで文面を作り、手書き・封入・発送まで行う)の利用規約と申込書では、改訂で、手書きの文字の綺麗さ・可読性・誤字脱字がないことを保証しない旨を明記しました。手紙による営業でも、宛先のリストを誰が用意し、その取得元と適法性の責任をどちらが負うか、送付先から苦情が来たら誰が対応するかは、決めておきたい事項です。
講座商材の集客営業を受ける会社の契約(2024年)では、相手方の原案が、特定商取引法・消費者契約法・消費生活条例など販売業者が守るべき法律を守ることに加えて、「甲の個別の指示があった場合も遵守する」と書いていました。事務所は「『甲が個別の指示する法律』という意味でしょうか?」とコメントで確かめ、修正版ではこの一文が削られています。法令の遵守の条は、何を守るのかが特定できる書き方にしないと、受託者が負う義務の範囲が分からなくなります。
勧誘の場面では、断定的な説明にも注意が要ります。相手方が消費者なら、将来の変動が不確実な事項について断定的判断を提供して誤認させた場合、契約を取り消され得ます(消費者契約法4条1項2号)。コンサルティング契約のレビューでは、「必ず売上が伸びる」といった断定をすれば、成果を保証しない条項があっても取消しの対象になり得ると説明しました(成果を保証しない書き方)。
起きがちなことと、契約書での備え
勧誘のルールは、報酬の確定や成果の非保証と組み合わせて設計します。営業代行の契約書と広告表示の責任分担もあわせてご覧ください。
よくあるご質問
営業代行者がZoomで勧誘すると、電話勧誘販売になりますか?
なり得ます。Web会議の通話も電話に含まれ得るという整理があり、売る側から案内して始めた商談や、勧誘の目的を告げずに相談を申し込ませた商談は、電話勧誘販売とされるおそれがあります。相手方が事業者として契約する場合は、特商法のこれらの規定は原則として適用されません。
広告を見たお客様が自分から個別相談を申し込んだ場合も、電話勧誘販売ですか?
広告やLPで内容と価格を示し、お客様が自分から申し込んで契約に進むなら、通信販売として整理される方向です。ただし、勧誘の目的を告げずに電話をかけるよう求めた場合などは、政令の定める「電話をかけさせる方法」に当たり得ます。
相手方が事業者かどうかは、契約書に書けば足りますか?
一文の確認だけでは足りないことがあります。事務所の改訂版では、事業者であることの表明保証に加え、事業の内容・屋号・開業の時期の記載と、登記事項証明書や開業届の控えなどの提出を求め、確認できなければ業務の開始を留保できるとしました。
構築や運用だけを受ける場合も、勧誘の責任を問われますか?
勧誘に関与していたと見られると、不法行為の責任を問われるおそれがあります。購入の勧誘をしないこと、顧客対応は問合せへの返信と案内に限ることを契約に書いておくと、役割の線引きがはっきりします。
訪問営業を任せるとき、契約に何を書けばよいですか?
特定商取引法・消費者契約法の遵守、クーリング・オフの説明の省略や妨害を含む禁止行為、違反時の即時解除、顧客の個人情報の安全管理を書きます。報酬の確定をクーリング・オフの期間の経過に連動させる例もあります。
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本ページは一般的な情報提供です。事務所の改訂例・ご相談の事例として紹介している内容は、アトラス行政書士法人が作成・レビューしてきた広告運用代行・Web集客支援・マーケティング支援の業務委託契約書、MEO・SEOサービスの利用規約、テレアポ・アポ獲得代行・営業代行の契約書、レビュー報告書、ヒヤリングシートなどを、個別の事業者が特定できない形に整理したものです。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月16日)。参考: e-Gov法令検索 / 特定商取引法ガイド(消費者庁) / 表示対策(消費者庁) / フリーランス法特設サイト(公正取引委員会)