このページの要点
- 広告費の一定割合の型では、基礎を「媒体に払った広告費(税別)」などと定義し、最低手数料を置く。
- 配信開始前の準備も報酬の対象とし、報酬は契約日から発生すると書く。請求書の発行を支払の要件にしない。
- 成果報酬は、対象の売上(導線・リンク経由など)、双方が確認できる計測のデータ、返金時の調整、終了後の扱いを決める。
- 「売れた分から払う」型では、支払の原資を分配対象の収益に限り、終了時に残額を請求しないことを明文にする。
結論:報酬の「基礎」と「発生の時点」を先に決める
広告運用代行・集客支援の報酬は、広告費の一定割合、月額固定、初期特別価格、成果報酬、売上や粗利の分配など、いくつもの型があります。どの型でも、紛争になるのは料率の高い低いではなく、次の2点が書かれていないときです。
- 何を基礎に計算するのか(広告費か、売上か、粗利か。税込みか税別か。どの導線を経由した売上か)。
- いつ報酬が発生し、いつ確定するのか(配信した月か、決済が完了した時か。返金やキャンセルがあったらどうするか)。
なお、事務所の書類に現れた広告運用代行の報酬は、広告費の一定割合と月額固定の型で、広告から獲得した件数ごとに課金する型の例はありませんでした。成果報酬の素材は、MAツールの導線のレベニューシェア(売上の分配)、集客記事、SNS上のショップ機能への出店支援、営業代行から来ています。このページでは、それぞれの型で事務所がどう書いたかを紹介します。広告費そのものの負担は広告費の負担と精算で扱います。
広告費の一定割合と最低手数料
広告運用代行の報酬で最も多いのは、広告費に一定の料率を掛ける型です。事務所の書類では、料率はどれも20%でしたが、計算の基礎の書き方と、広告費が少ない月の手当てには違いがありました。
| 契約 | 計算の基礎 | 広告費が少ない月の手当て・別建て |
|---|---|---|
| 広告運用の代行会社(1社目) | 月額広告運用額の20%(税別) | 広告運用額が月額で一定額以下のときは、定額の月額報酬に切り替える |
| 広告運用の代行会社(2社目) | 当該月に実施した広告媒体費用(税別)の20%相当額 | GA分析は月額固定で別建て |
| LP制作+広告運用代行の個人の支援者 | 毎月の広告費に20%を乗じた金額 | 月の広告費が一定額以下なら最低広告代行費として月額の定額。キャンペーン等による変動を妨げない |
| 採用向けSNS運用+広告の制作会社 | 実支出広告費の20%(税抜) | 初期費用・月額費用・LPの保守運用費は別に一覧化 |
最低手数料は、広告費を絞った月に運用の手間は変わらないのに手数料だけが減る、という採算割れを防ぐ定めです。
料率型で気をつけたいのは、広告費が少ないときの最低手数料と、広告費の範囲です。広告費を一時的に止めた月に手数料がゼロになる書き方だと、運用の再開に向けた準備やレポートの作業が無償になります。また、手数料の基礎が「媒体に払った額」なのか、ツールの利用料や制作費を含むのかがずれると、請求のたびに確認が必要になります。広告運用とGA分析を受けた代行会社の契約では、分析は料率ではなく月額固定で別建てにしています。広告費の額に連動しない作業は、料率の基礎から外して別に値決めする形です。
条文例広告費の一定割合と最低手数料(受注者の側の例)
- 甲は、乙に対し、本業務の対価として、各月に甲が広告媒体に支払った広告媒体費用(消費税等を除く。以下「広告費」という。)の20パーセントに相当する額を支払う。
- 前項の額が別に定める最低月額に満たない月は、甲は、最低月額を支払う。広告の配信を一時停止した月も同様とする。
- 広告費には、外部ツールの利用料、素材の購入費その他の実費を含まない。これらの実費は、別条の定めにより甲が負担する。
事務所の書類にある料率・最低手数料・広告費の範囲の定めを組み合わせて一般化した例です。
月額固定・初期特別価格・準備期間・支払時期
個人の広告運用者が受注者となる基本契約では、初期特別価格(月額固定)と、通常の報酬である「広告運用費の20パーセント相当額」の2段構えにしています。初期特別価格を適用するかどうかと期間は個別契約で決め、「広告運用費の定義、運用対象媒体、対象期間及び計算基礎」に疑義が出ないよう、個別契約で具体化すると定めました。この契約では、報酬の発生についても細かく書いています。
個人の広告運用者の基本契約が報酬について決めたこと
- 配信開始前の準備(設定、計測の確認、入稿の準備、ヒアリング、競合分析など)も報酬の対象とし、報酬は契約日から発生する。
- 発注者の都合で配信の開始が遅れても、すでに提供した分は請求できる。
- 初月は月額を30で割った日割りとし、1円未満は切り捨てる。
- 各月分は当月10日までの前払い。10日を過ぎて成立した個別契約は、成立後3営業日以内と業務開始日のいずれか早い日までに払う。
- 請求書の発行は支払義務の要件ではない。
- フリーランスへの業務委託に関する法令上の支払期日に適合するよう運用する。
準備期間を報酬の対象にしておく意味は大きく、配信開始前にアカウントの設定や計測タグの確認で時間がかかるのに、「まだ配信していないから払わない」と言われる事態を防げます。請求書の発行を支払の要件にしない一文は、請求書の送り忘れを理由に支払を遅らされないための手当てです。
月額固定の型では、業務量の増減を月額で吸収することになります。マーケティング支援の月額契約では初月だけトライアル価格を適用できるとし、MAツールのローンチの構築・運用では、月額をローンチの種類の差をならした平均額とし、業務量が少ない月やローンチがない月も減額しないことを依頼者との確認で書き込みました(契約の型と業務範囲)。設備会社がHP管理とリスティング広告の代理を一括して委託した発注者の側の契約は、月額固定で、広告手数料の料率や媒体費の扱いの定めはありません。
成果と報酬を切り離す一文も、多くの書類に入っています。採用向けの制作会社の契約は「業務遂行の成否または成果物が乙の期待を満たすか否かにかかわらず、乙は支払義務を免れない」とし、既払いの報酬は返さないと定めました。自治体向けの営業支援の契約は、報酬が「成果の如何を問わず」業務遂行の対価であることを確認しています。
受注者が個人で、消費税の適格請求書(インボイス)を発行できない場合もあります。AIを使った発信基盤の追加契約では、受注者が適格請求書発行事業者でないことを互いに確認し、これを理由とする減額や支払の拒否をしないと定めました。報告書では、書いておかないと仕入税額控除に相当する額の値引きを求められる余地が残るため、と説明しています。
月額や料率を途中で見直す手順も、報酬の条の一部です。MEO(Googleマップでの店舗の表示を上位にするための施策)のサービスの利用規約には、検索エンジンのアルゴリズム(表示順位を決める仕組み)の変更その他運用上の理由でサービスの提供・維持が難しくなったときは料金を増額できる、ただし既存の契約者には契約期間の満了まで旧料金を適用する、という条がありました。値上げの理由を限定し、既存の契約には及ぼさない形です。MAツールのローンチの構築・運用の契約では、事務所の回答で、契約の満了の45日前に業務の明細と料金の見直しを協議する時期を置くことを勧め、値上げを切り出すきっかけを条文にしています。粗利シェアの契約でも、更新時と期間中に料率の見直しを協議できるとしました。「協議できる」だけでは相手が応じないこともありますが、見直しの時期と材料(業務量・広告費・獲得の単価など)を書いておくと、話を始める根拠になります。
固定報酬から着手金+レベニューシェアへ:MAツールの導線
MAツールで販売導線(ファネル。広告やSNSから申込み・決済までの流れ)を構築・運用する受注者の契約は、2025年の当初の版と2026年の改訂版で、報酬の型が全面的に変わりました。
事務所の書類での改訂 報酬体系の転換
報酬の型
固定報酬は売上と関係なく発生しますが、レベニューシェアは導線から売上が出て初めて発生します。型を変えると、成果報酬の定義と計測の条が契約の中心になります。
成果報酬の定義
「どの売上が受注者の導線経由か」を、双方が見られるデータで決めています。返金・チャージバック(カード会社による売上の取消し)は次回以降の計算で調整します。
終了後の売上
導線は契約が終わっても動き続けるので、終了直後の売上の扱いを決めておきました。
改訂の途中では、発注者の協力義務と、売上が出ないときの協議の条も加えています。発注者は情報・素材の提供に加えて、広告運用・SNS運用・既存顧客への案内といった集客活動に協力し、協力が足りずに成果に影響が出ても受注者は責任を負いません。また、受注者の導線を経由した売上が連続して3か月ゼロのときは、原因を分析し、業務内容・集客方法・報酬体系の見直しを協議します。レベニューシェアは、受注者だけでは売上を作れない型なので、発注者が集客をしない場面への手当てが欠かせません。広告費が一定額を超えたときの料率の協議は広告費の負担と精算で紹介しています。
「売れた分から払う」型と粗利シェア
SNSでのプロデュースと作品販売を組み合わせた収益分配のプロモーション契約では、依頼者から渡されたベースのドラフトが、初期費用と月額費用を売上と関係なく毎月払う型でした。ところが、相談の条件は「売れた分から払う、売れなければ払わなくてよい」という正反対の支払の構造です。事務所の提案書では、報酬の条を全面的に書き直す必要があるとして、次の設計を示しました。
「売れた分から払う」を契約にする設計(提案書から)
支払の原資を限る
分配対象の収益からだけ払う
- 支払の原資を分配対象の収益に限定する(条件付きの支払の考え方)
- 売上が立たなければ支払義務も生じない形にする
残額を請求しない
終了時の火種を消す
- 終了時に未回収の残額を請求しないことを明文にする
- 書かないと「支払が先送りされていただけで、終了時に一括で請求できる」という争いの火種になる
受注者の防御
売上を立たせない場合への備え
- プロモーション費用を優先して回収する
- 撮影への協力が足りないときの遅延の免責
- 相手方が故意に売上を立たせないときは条件の成就を妨げたものとして扱う(民法130条1項の考え方)と違約金
この契約では、売上を分けるもの(ECの販売、広告収入、物販など)と、利益を分けるもの(イベント)が混ざっていたため、「売上」「費用」「利益」「分配対象収益」を定義で固定しました。受注者が関与しない講演などは相手方が100%受け取るとし、関与とは何かを例示(企画立案、交渉の窓口、集客・告知、当日の運営)で切り分けています。
粗利を分ける型もあります。マーケティング・制作支援の受注者の側と見られる依頼で、相手方の原案をレビューして作った修正版では、委託料を「粗利×35%(+消費税)」とし、粗利は総売上から本件経費を引いた額、本件経費は広告宣伝費・決済手数料・合意した費用で、受注者が事前に書面で申請し発注者が承認したものに限る、と定めました。計算するのは発注者で、月末締めで粗利と委託料の計算書を翌月10日までに交付し、受注者は5営業日以内に異議を出せます。契約の更新時や期間中にも、市場の変動などに応じて料率の見直しを協議できるとしています。粗利の分配は、計算の主体が相手方になるので、計算書の交付と異議の期間がないと、受注者は数字を確かめられません。
成果の定義・計測・否認:集客記事とショップ支援
成果報酬で最も揉めるのは、「その成果は誰のおかげか」を決める部分です。医療機関向けの集客記事を成果報酬で作成する受注者の契約では、成果の要件と、発注者による否認の制限を細かく書いています。
| 項目 | 定め |
|---|---|
| 成果の要件(すべて満たすこと) | 記事を初回の接点とする流入がGoogleアナリティクス等で客観的に確認できる/初回の来院で、類似のサービスの利用履歴がない/特定のコースを来院のうえ購入し、決済が完了した |
| 計測 | GA・購買履歴・予約情報で計測し、記事の閲覧日から30日以内の購入を対象とする。計測方法の変更は協議し、一方的な不利益変更はできない |
| データを出さないとき | 発注者がデータを出さず計測できないときは、受注者の合理的な算定値を成果とみなす |
| 承認と否認 | 毎月報告し、30日以内に承認・否認。否認できるのは取引の不成立(取消し・解除)と計測の重大な不備に限り、対象・理由・客観資料(メール・GAのデータ・購買履歴など)の明示がない否認は無効 |
| 不当な否認が続くとき | 不当な否認が月の成果の30%以上の状態が2か月続いたら、受注者は催告なしに解除できる |
| 報酬の型 | 承認された記事1本ごとの固定報酬+成果1件ごとの成果報酬 |
成果を発注者のデータでしか確かめられない契約では、データを出さない、否認を続ける、という場面への手当てがないと、受注者は報酬を受け取れません。みなしの算定と、否認の理由と資料の明示は、その手当ての典型です。なお、この契約は記事の内容を発注者が監修する前提で、医療広告の規制との関係は広告表示の責任分担で扱います。
SNS上のショップ機能への出店とインフルエンサーの活用を支援する契約では、成果報酬の基礎を、ショップ上で注文が確定し決済が完了した販売代金とし、キャンセル・返品・返金を除外しました。料率は商品ごと又はインフルエンサーごとに別途合意し、売上と算定の根拠の明細は発注者が交付します。消費税・送料・手数料・広告費を控除するかどうかは「別途合意」とし、商品ごとの料率とあわせて個別の合意で決める形です。成果報酬の算定の基礎を個別の合意に委ねるなら、合意の記録を残す方法も決めておくと、請求のたびの確認が減ります。また、当初の案にあった最低報酬(成果報酬が下回る月は差額を払う定め)は、改訂で削られています。成果報酬だけの契約では、売上が出ない月の受注者の収入はゼロになります。
ヒヤリングの問いと理由成果報酬を定める前に確かめること
成果は、どの時点で発生しますか(申込み・決済完了・入金・来院・キャンセル期間の経過など)。
決済の完了やキャンセル期間の経過を要件にすると、取消しによる戻しの手続を減らせます。営業代行での確定の要件は営業代行の契約書のページで扱います。
成果を、どのデータで、誰が確かめますか。
決済システムの管理画面、アクセス解析、予約の記録など、双方が見られるデータを指定します。発注者だけが見られるデータなら、提出の義務と、出さないときの扱いを決めます。
どの売上を受注者の成果として扱いますか。
受注者の導線・記事・リンクを経由したものに限る、初回の顧客に限る、など帰属の基準を書きます。
返金・キャンセル・チャージバックが出たら、どう調整しますか。
次回以降の報酬で調整するのか、返還を求めるのか、いつまで調整するのかを決めます。
契約が終わった後の売上は対象にしますか。
テールの期間(終了後6か月、3年など)と、その間の計測の方法を決めます。
起きがちなことと、契約書での備え
報酬の型は、契約期間と解約の条と一体で決まります。最低契約期間や途中でやめるときの精算は契約期間と中途解約、外部のパートナーに払う報酬の支払期日は外部パートナーとの契約とフリーランス法で扱います。
よくあるご質問
広告運用代行の手数料は、広告費の何%で書く例が多いですか?
事務所の書類では、広告費の一定割合で報酬を決めた例はいずれも20%でした。料率よりも、計算の基礎(媒体に払った額か、税別か)と、広告費が少ない月の最低手数料の書き方が重要です。
配信を始める前の準備にも報酬を請求できますか?
契約に書けば請求できます。事務所の書類では、設定・計測の確認・入稿の準備・ヒアリング・競合分析などの準備も報酬の対象とし、報酬は契約日から発生すると定めた例があります。
成果報酬の「成果」はどう定義すればよいですか?
発生の時点(決済完了など)、確認するデータ、受注者の成果として扱う売上の範囲(導線やリンクを経由したものなど)、返金時の調整、終了後の扱いを決めます。発注者だけがデータを持つなら、提出義務と出さないときの扱いも書きます。
売れなかったら払わなくてよい契約にするには?
支払の原資を分配対象の収益に限ると書き、契約終了時に未回収の残額を請求しないことを明文にします。書かないと、支払が先送りされていただけだとして終了時に一括で請求される争いが起き得ます。
発注者が成果を認めないときに備える条項はありますか?
否認できる理由を取引の不成立や計測の重大な不備に限り、対象・理由・客観資料の明示がない否認を無効とする例があります。不当な否認が一定の割合で続いた場合の解除を定めた例もあります。
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