このページの要点
- 主催者と景品の提供者は発注者と明記し、受託者の関与を「提案」と「事務」に分けて書く。
- 景品の上限の確認に必要な取引価額と売上予定総額は発注者が書面で通知し、受託者には違反のおそれがあるときに止める権限を持たせる。
- 応募者データは運営の目的に限って委託し、再委託、事故時の通知、終了時の消去を決める。
- 抽選の方法と記録、当選連絡の期限、発送事故の原因別の負担を企画書と契約に同じ内容で書く。
結論:運営を任せても、企画の責任まで移るとは限りません
キャンペーン、懸賞、プレゼント企画の運営を外部に任せる契約では、応募の受付、抽選、当選の連絡、景品の発送といった「実施の事務」は受託者に移せます。一方で、その企画が景品規制に収まっているか、表示が正しいかという「企画の適法性」は、景品を出す事業者である発注者の側に残るのが基本形です。ここを曖昧にしたまま「法令を遵守して運営する」とだけ書くと、上限を超えた景品が出てしまったときに、誰がどこまで責任を負うのかが契約から読み取れません。
運営代行の契約で先に決めておくことは、次の4つに整理できます。
- 主催者は誰か。景品を出す事業者(景品類の提供者)と、運営の事務を引き受ける事業者を分けて書いたか。
- 景品の上限や総額を、誰が、いつ、どの資料で確認するのか。確認に必要な数字(取引価額や売上予定総額)は誰が知っているのか。
- 応募者の氏名・住所・SNSアカウントなどのデータは誰のもので、受託者はどこまで使ってよいのか。終了後はどうするのか。
- 抽選の公正さを後から示せる記録を残すのは誰か。当選連絡や景品の発送で事故が起きたとき、誰の負担でどう直すのか。
この記事では、この4つを順に説明し、最後に契約書の骨格と、誤った書き方の直し方、ヒヤリングで確認する事項をまとめます。広告費の扱いは広告費(媒体費)の負担と精算、広告表現の責任分担は広告運用代行と景品表示法・薬機法・医療広告で扱っているため、ここでは「企画を実施して景品を渡す」部分に絞ります。条文例は、論点を説明するために書き起こした一般的な例です。
主催者は誰か:景品を出す事業者と運営を請け負う事業者を分ける
景品規制の入口は、そもそもその企画で配るものが「景品類」にあたるかどうかです。消費者庁の解説では、景品類は次の3つを満たすものとされています。
- 顧客を誘引するための手段であること。
- 事業者が、自己の供給する商品やサービスの取引に付随して提供すること。
- 物品、金銭その他の経済上の利益であること。
2つ目の「自己の供給する商品・サービスの取引に付随して」という部分が、運営代行では特に重要です。規制の名宛人として最初に想定されるのは、取引の売り手である発注者です。運営代行会社は、発注者の商品を売るために企画を実施する立場なので、通常は景品類を提供する事業者そのものではありません。ただし、企画の内容や表示の決定に深く関与した受託者が、責任を問われる可能性まで否定することはできません。ですから契約では、主催者と景品の提供者を発注者と明記し、受託者の関与(提案まで、文面の作成まで、最終決定まで)を区別して書きます。
三つの型で考える
運営代行の主催の型
発注者主催型
最も多い型
- 発注者が主催者で景品の提供者。受託者は事務を受ける
- 適法性の確認と表示の最終承認は発注者
共同主催型
複数の事業者が景品を出す型
- 共同懸賞は上限や総額の考え方が一般の懸賞と別になる
- 参加事業者と、費用・景品の分担を先に書く
受託者企画・発注者協賛型
受託者が企画し発注者は景品を提供
- 受託者が主催者として表示され、企画・表示の責任が受託者に寄る
- 参加者の個人情報も主催者である受託者が取得する
懸賞の種類と上限の目安
景品類を「どう渡すか」で、適用される上限が変わります。消費者庁が公表している区分は、次のとおりです。
| 渡し方 | 内容 | 最高額・総額の目安 |
|---|---|---|
| 一般懸賞 | 購入や来店などの取引に付随して、くじ・クイズの正誤・競技の優劣などで景品類を提供する | 取引価額が5,000円未満なら取引価額の20倍、5,000円以上なら10万円。総額は、その懸賞に係る売上予定総額の2% |
| 共同懸賞 | 複数の事業者が参加して行う懸賞 | 取引価額にかかわらず最高額30万円。総額は売上予定総額の3% |
| 総付景品 | 懸賞によらず、購入者や来店者などに提供する景品 | 取引価額が1,000円未満なら200円、1,000円以上なら取引価額の10分の2 |
| オープン懸賞 | 商品の購入や来店を条件とせず、告知を見た誰もが応募できる抽選企画 | 景品規制の適用はなく、提供できる金品に具体的な上限額の定めはない(平成18年4月に上限規制が撤廃) |
数字は消費者庁の公表資料で確認した内容です。取引価額の捉え方や、複数の景品を併せて渡す場合の扱いは個別に確認が必要です。参加費が取引価額にあたるかは、この表では判断していません。
「SNSでフォローして投稿すれば誰でも応募できる」という形でも、応募に商品の購入が条件として入った途端に、一般懸賞の枠で考える必要が出ます。どの景品がどの枠に入るかは、契約に添付する企画書で一覧にしておきます。
上限は誰が、いつ確認するのか:計算で見る企画の確認手順
景品の上限は、企画を公開する前に確認します。公開後に気づいても、すでに告知した景品を引っ込めれば、参加者との間で別の問題が生じるからです。確認に必要な数字は、多くが発注者の手元にあります。取引価額(応募の条件になる商品の価格)も、懸賞に係る売上予定総額(その企画の期間中に見込む売上の総額)も、受託者は知らないのが普通です。したがって契約では、これらの数字を発注者が書面で通知する義務として書き、受託者はその通知を前提に運営する形にします。
計算例
次の例は、計算の見方を示すための仮の数字です。
| ケース | 前提 | 確認の結果 |
|---|---|---|
| 購入者から抽選で景品を渡す(一般懸賞) | 商品の取引価額3,000円、売上予定総額600万円、1本6万円の景品を3名に提供 | 1本あたりの上限は3,000円の20倍で6万円なので範囲内。総額の上限は600万円の2%で12万円。6万円を3名なら18万円で、総額が超過する。2名までなら12万円で上限に並ぶ |
| 来店者全員に景品を渡す(総付景品) | 取引価額が600円と2,500円の2種類の商品がある | 600円は1,000円未満なので上限は200円。2,500円は1,000円以上なので取引価額の10分の2で500円 |
| 参加費を取る大会形式で、参加賞を全員に、上位者に副賞を渡す | 参加費1,500円。参加賞は全員、副賞は競技の優劣で決める | 参加賞は懸賞によらない総付景品、副賞は競技の優劣による懸賞として、それぞれの定めに当てはめる。参加賞は参加費を取引価額とみた場合は上限が300円になる。取引価額の捉え方は個別に確認が必要 |
数字は仮のものです。
最初の例は、ひとつの数字だけを見ていると見落としがちです。1本あたりの上限には収まっていても、当選者を増やした途端に総額の上限を超えます。「当選者数の増加」は応募が少ないときに現場の判断で行われがちなので、契約には、当選者数と景品の総額を企画書から変更する場合は発注者の書面承認が必要だと書いておきます。
受託者の側から見ると、「景品表示法その他の広告法務の審査」は対象外業務に置くのが一般的です。法令の適合性を判断し助言する義務まで負うと、報酬に見合わない責任を引き受けるからです。その代わり、告知物や企画書が法令に違反するおそれがあると合理的に判断したときは、修正を求め、運営を中断できる権限を持たせます。
条文例景品の上限の確認と中断
- 甲は、本企画の実施前に、本企画の方式、景品の内容及び金額、応募の条件の対象となる商品又は役務の取引価額、並びに本企画に係る売上予定総額を、書面又は電磁的方法で乙に通知する。
- 甲は、前項の通知に基づき、本企画の景品が法令の定める上限及び総額の範囲内にあることを自らの責任で確認する。乙は、この確認について助言する義務を負わない。
- 当選者数、景品の内容又は金額を企画書の記載から変更する場合は、甲の書面による承認を要する。
- 乙は、告知物又は運営の内容が法令に違反し、又は第三者の権利を侵害するおそれがあると合理的に判断したときは、甲に修正を求め、これが行われるまで本業務の全部又は一部を中断することができる。この場合の遅延について乙は責任を負わない。
確認の責任を甲に置き、乙には「止める権限」を持たせる構成の例です。
応募者データは誰のものか:委託の範囲、利用目的、消去
応募者の氏名、住所、電話番号、メールアドレス、SNSのアカウント名は、個人情報にあたります。運営代行では、これらが発注者のフォームに入る場合も、受託者が用意した応募ツールに入る場合も、SNSの投稿やDMから受託者が拾う場合もあります。どの経路でも、契約で決めるべきことは同じで、取得の主体、利用目的、委託の範囲、安全管理、事故時の連絡、終了時の消去の6点です。
個人情報保護法には、これらに対応する規律があります。個人情報の利用目的はできる限り特定しなければならず(17条1項)、あらかじめ本人の同意を得ずに、特定した利用目的の達成に必要な範囲を超えて取り扱うことはできません(18条1項)。応募フォームのように本人から直接書面(電磁的記録を含みます)で情報を取得するときは、あらかじめ本人に利用目的を明示する必要があります(21条2項)。運営を外部に任せる場合、個人データの取扱いの全部又は一部を、利用目的の達成に必要な範囲内で委託することに伴って提供される場合は、提供を受ける者は第三者に当たらないとされています(27条5項1号)。そのため、委託の範囲内であれば、応募者の同意を新たに取らなくても受託者に預けられます。その代わり、委託する側には、委託先に対する必要かつ適切な監督義務があります(25条)。
利用目的に何を書くか
応募画面には、抽選・当選の連絡・景品の発送という、企画の運営に必要な目的を具体的に書きます。一般的なプライバシーポリシーには「懸賞、キャンペーン等の実施のため」といった一文が入っていることがありますが、重複していたり他の目的と混ざっていたりすると、応募者には何に使われるのかがわかりません。企画ごとの応募画面で、「当選者の抽選、当選のご連絡、景品の発送のために使います」と明示し、今後の案内を送るのであれば、別の目的として、同意を分けて取ります。メールなどで広告宣伝を送る場合は、特定電子メール法の規律も別にかかります。
この線引きは、受託者の側にも関わります。受託者が、預かった応募者のリストを自社の別の企画に流用したり、次の営業に使ったりすれば、委託の範囲を超えた利用になります。契約には「本企画の運営の目的以外に使用しない」と書き、複製は作業に必要な範囲に限ります。
応募者データの条項に入れる事項
- 取得の主体(発注者のフォーム、受託者の応募ツール、SNS上の投稿)を企画書で特定したか。
- 再委託する先(抽選ツール、発送業者など)を事前承諾の対象にしたか。
- 利用するサービスのサーバーが外国にある場合に、外国にある第三者への提供の制限(28条)を確認したか。
- 未成年の応募を認めるか。認めるなら保護者の同意の取り方を決めたか。
漏えい等の報告については、個人データの漏えいなどで個人の権利利益を害するおそれが大きい事態が生じたとき、個人情報取扱事業者は個人情報保護委員会へ報告し、本人へも通知する必要があります(26条1項・2項)。ただし、他の事業者から個人データの取扱いの委託を受けていた場合は、委員会規則に従って委託元に通知したときは、この報告の義務が免除される定めになっています(26条1項ただし書)。受託者にとっては、発注者への通知の期限が、事実上の最初の義務になります。契約の中で「事故を知ったときは直ちに」とだけ書かず、時間の目安と、通知する内容(いつ、何件、どの項目か)を決めておくと、実際の初動が早くなります。
条文例応募者データの取扱い
- 乙は、本業務のために取得し、又は甲から提供を受けた応募者の個人情報(以下「応募者情報」という。)を、抽選、当選者への連絡及び景品の発送の目的の範囲でのみ取り扱い、自己又は第三者の営業その他の目的に使用してはならない。
- 応募者情報の取得にあたり応募者に示す利用目的は、甲が承認したものとする。
- 乙は、応募者情報について、漏えい、滅失及び毀損の防止のために必要かつ適切な措置を講じる。
- 乙は、本業務の一部を再委託する場合は、甲の事前の書面による承諾を得るものとし、再委託先に本条と同等の義務を課し、その履行を監督する。
- 乙は、応募者情報の漏えい等又はそのおそれを知ったときは、直ちに甲に通知し、事実関係と原因を速やかに報告する。
- 本企画の終了後、乙は、甲の指示に従い、応募者情報を返還し、又は復元できない方法で消去し、その旨を甲に報告する。
委託の範囲の考え方と、再委託・事故時・終了時の扱いを一つの条にまとめた例です。
抽選と当選発表:公正だったことを、後から示せるようにする
抽選の企画で最も多い争いは、「本当に抽選したのか」「なぜ自分は外れたのか」という疑いから始まります。完全に防ぐことはできませんが、方法と記録を契約と規約の両方で一致させておくと、疑いに対して根拠のある説明ができます。
| 決め方 | 契約に書くこと | つまずきやすい点 |
|---|---|---|
| 無作為の抽選 | 抽選の方法(ツールの種類、乱数か目視か)、実施日時、立会い者、記録の保存 | 抽選ツールの仕様変更や障害のときに、抽選を無効にして再実施できる権限が書かれていない |
| 審査・選考(応募作品の優劣) | 審査の基準、審査員の人数と選び方、最終決定者、選考結果の通知方法 | 基準が告知と実際とで食い違う。審査員に受託者の担当者が入るかどうかが曖昧 |
「くじ」で決めるか、「優劣」で決めるかは、景品規制の上でも懸賞の定義に関わるため、企画書で方式を特定します。
記録を残す
後から示せるように残すべき記録は、応募の一覧、除外した応募とその理由(条件を満たしていない、同一人物の重複など)、抽選の方法と結果、当選者の一覧、当選の連絡の履歴です。抽選履歴や当選履歴を利用情報として扱うプラットフォームの規約には、これらを運営の目的で取得すると明記し、サーバーに記録されたデータを正式な記録として扱うと定める例があります。運営代行の契約でも、どちらの記録を正本とするのか、保存の期間、発注者が確認を求められる権利を書いておきます。
当選の連絡と無効
当選者への連絡は、DM、メール、ウェブ掲載などの方法があります。「当選者への連絡をもって発表に代える」と規約に書いたなら、その方法で実際に連絡できる前提が必要です。SNSのDMは、相手がフォローしていないと届かない設定があり、連絡できないまま期限が過ぎることがあります。連絡の期限、返信の期限、期限を過ぎたときの当選の無効と繰り上げ当選の有無を、企画書に書きます。
不正への対処も、契約に落としておく項目です。同一人物による複数アカウントでの応募、自動化プログラムによる応募、景品の転売や換金を目的とした応募などを禁止し、判断する権限は主催者にあることを書きます。受託者の担当者が独断で当選を取り消せば、当選者から見ればそれは主催者の行為です。取消しの判断と通知は発注者の承認を要し、受託者は記録の提出までを担当すると整理します。
参加費を取って景品を渡す企画(ビンゴ形式など)は、賭博罪との関係も別に確認が必要です。運営プラットフォームの規約には、参加費に見合う価値を抽選の結果に依存しない形で全員に提供することを、景品を出す側の義務とする例があります。
条文例抽選・当選発表・システム障害
- 抽選は、企画書に定める方法により、甲が指定した日時に乙が実施する。乙は、抽選の方法、実施日時、結果及び除外した応募とその理由を記録し、本企画の終了後〇か月間保存して、甲の求めに応じて開示する。
- 当選者への連絡の方法、連絡の期限、返信の期限及び期限後の扱い(無効、繰り上げ)は、企画書に定める。
- 応募の条件を満たさない者、不正な手段による応募者その他甲が不適当と判断した者の応募は、無効とする。乙は、無効の判断に必要な事実を調査して甲に報告し、無効の決定及び当選者への通知は甲の承認を得て行う。
- システム障害その他の事由により抽選又は結果の表示に重大な支障が生じたときは、甲と乙は協議のうえ、抽選の全部又は一部の無効、再実施又は中止を決定する。
数字の〇は、企画の規模に応じて埋める項目です。保存の期間は、苦情が出やすい期間を見て決めます。
景品の発送事故:何が起きたとき、誰が負担するのか
景品の発送は、トラブルが多い一方で金額は小さいことが多い領域です。事故の類型ごとに、誰の負担で、どう直すかを決めておきます。
| 事故の類型 | 起きがちな場面 | 契約での備え |
|---|---|---|
| 届け先の誤り・不備 | 当選者の入力ミス、転居、番地の欠け | 届け先の正確性は当選者の責任とし、不備による遅延・未着は主催者側の責任としない旨を規約に書く。受託者は入力内容の目視確認までを担当する |
| 宛先不明・不在・受取拒否による返送 | 長期の不在、受取拒否 | 再発送の費用は当選者の負担とする条件と、再発送の回数の上限、保管の期限を決める |
| 配送中の紛失・破損 | 配送業者の事故 | 配送業者の補償の範囲、補償を超える部分の扱い、代替品の発送の手順を決める |
| 在庫不足・仕様の違い | 景品の欠品、仕様変更、納品遅れ | 景品の調達は誰の責任かを書き、告知した景品と同等以上のものへ変更する場合の条件と、当選者への事前の通知を決める |
当選者が消費者である場合、規約で責任を全部免除する書き方は、消費者契約法の面から無効とされるおそれがあります(次の段落)。
「引き渡した時点で履行」と書くときの注意
運営代行の契約や運営者の規約には、「景品を配送業者へ引き渡した時点で、発送の義務を履行したものとする」と書く例があります。ただし、この定めが及ぶのは発注者と受託者の間だけです。当選者に景品を約束したのは主催者である発注者なので、届かなければ当選者は発注者に対応を求めます。受託者の義務が引渡しまでなら、配送事故は発注者の負担になります。発注者の側は、梱包と宛先の入力は受託者の責任、配送中の事故は受託者が配送業者との手続を行って結果を報告する、というように受託者に負わせる範囲を細かく書いておきます。
当選者に対する免責の書き方にも注意が必要です。当選者が消費者で、景品の受取りが消費者契約にあたる場合、事業者の債務不履行による損害賠償責任の全部を免除する条項は無効とされます(消費者契約法8条1項1号)。責任の一部を免除する条項は、事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失による場合を除く旨を、免除を定めている一文の中に書かないと無効になります(同法8条3項)。また、消費者の利益を一方的に害する条項は、同法10条で無効となる場合があります。「一切の責任を負いません」の一文は、規約が短く見える反面、無効とされるリスクを高めます。
「在庫の都合により同等品に変更する場合があります」と書く例もありますが、告知した景品と異なるものを渡せば、表示と実際が食い違います。変更できる条件(同等以上の価値、事前の通知)を具体的に書きます。
条文例景品の発送と事故
- 乙は、当選者から届け先を受領した後、企画書に定める期日までに景品を発送する。乙は、宛先の入力内容を当選者の入力と照合し、誤りの有無を確認する。
- 乙は、景品を配送業者に引き渡したときは、追跡番号その他の引渡しの記録を保存し、甲の求めに応じて提出する。
- 宛先の入力の誤り、梱包の不備その他乙の責めに帰すべき事由により景品が届かず、又は破損したときは、乙の負担で再発送又は交換を行う。
- 配送業者の事由による紛失又は破損については、乙が配送業者に対する手続を行い、その結果を甲に報告する。配送業者の補償の範囲を超える部分の負担は、甲乙が協議して定める。
- 当選者の届け先の不備、不在又は受取拒否により景品が返送されたときの再発送の費用は、当選者の負担とすることができる。この場合の条件は、応募規約に明記する。
- 景品を同等以上のものに変更する必要が生じたときは、乙は事前に甲に通知し、甲の承認を得る。
引渡しの記録、乙の責任の範囲、配送業者の事由、返送時の費用を分けて書いた例です。
契約書の骨格:委託の型、費用と報酬、応募作品の利用、責任の上限
ここまでの論点を支える土台が、契約の型と費用の分け方です。
準委任と請負の分け方
応募の受付、問い合わせの一次受付、当選者への連絡、発送の手配は、結果の完成ではなく事務の処理を委託する準委任(民法656条)にあたるのが一般的です。受託者は善良な管理者の注意をもって事務を処理する義務を負い(同法644条)、委任者の請求があればいつでも処理の状況を報告します(同法645条)。応募フォームや特設サイトを制作して納めるのは、仕事の完成を約束する請負(同法632条)です。両方が入る契約では、制作は納品と検収、運営は報告と期間と、条を分けて書きます。型の考え方は契約の型と業務範囲で扱っています。
応募の数やSNS上の拡散といった成果は、受託者が保証するものではありません(成果を保証しない書き方)。
費用の分け方
費用は、景品本体と送料・梱包費は発注者の実費負担とし、応募フォームや抽選ツールの費用は見積りで特定します。事故対応の費用は原因を作った側が負担します。実費には上限と事前承認の手続を決めておくと、精算時の争いを減らせます。
報酬を応募の件数に連動させる場合は、「応募の件数」の数え方(重複応募、条件を満たさない応募、取り消された応募をどうするか)と、確認できる記録の見せ方を決めます。報酬の型全般は報酬・手数料の決め方を参照してください。
応募作品の利用
写真、イラスト、動画、文章を募集するキャンペーンでは、応募作品の利用の範囲が論点になります。応募作品には応募者の著作権があり、複製(著作権法21条)、公衆送信(同法23条)、翻案(同法27条)といった利用は、著作者が専有する権利です。二次的著作物を利用するときは、原著作物の著作者も同じ種類の権利を専有します(同法28条)。主催者が応募作品を自社のサイトや広告に載せるには、応募者から利用の許諾を受ける必要があり、許諾を得た者は、その利用方法及び条件の範囲内で利用できます(同法63条2項)。著作者人格権は譲渡できない(同法59条)ため、人格権については「行使しない」と合意する形で整理する例があります。
運営代行では、応募者が許諾したのは主催者で、受託者ではない点にも注意が必要です。受託者に作品を編集させたり、受託者のアカウントから掲載させたりすることが許諾の範囲に入っていなければ、利用が許諾の外に出ます。応募規約には「主催者が指定する委託先による利用を含む」と書き、代行契約には、受託者の利用を企画の運営の範囲に限ると書きます。制作物の権利の考え方は制作物の権利と契約に整理しています。
窓口対応、再委託、責任の上限
参加者からの問い合わせ窓口を受託者が引き受けるときは、受付と定型の案内、主催者への連絡までを受託者の業務とし、補償や個別の判断は主催者が行うと区別します。
発送や抽選ツールを再委託する場合は、事前の承諾と、再委託先の行為への責任を決めます。再委託先が個人事業主であれば、フリーランス法3条により、業務委託事業者が書面又は電磁的方法で給付の内容や報酬の額、支払期日を明示する義務もあります。外部の担当者の使い方は広告運用・営業代行の外注契約とあわせて確認します。損害賠償は、債務不履行の一般則(民法415条)に任せず、直接かつ通常の損害に限り、受領した報酬の額を上限とし、故意又は重大な過失、個人情報の漏えいを上限の外に置く例が多く見られます。
よくある失敗と直し方、ヒヤリングで確認すること
よくある失敗と直し方
書き方の例(一般的な例) 運営代行の契約でよく見られる書き方
景品規制への対応
「消費者保護法」のように正式でない呼び方では、どの法律の何を守るのかが決まりません。法令名は正式な名称で書き、確認の責任者と、止める権限の所在を書きます。
応募者データ
受託者の営業への利用は、委託の範囲を超え、応募者への利用目的の明示とも合いません。目的の限定と、終了時の消去を書きます。
発送事故
一切免責は、当選者への免責の書き方にも波及し、消費者契約法の面からも無効とされるおそれがあります。原因別に負担を分けます。
ヒヤリングで確認すること
確認の問いと理由契約書を作る前に確認する事項と、その理由
企画の方式と景品の渡し方(購入が条件か、誰でも応募できるか、抽選か競技か)は、どう設計していますか。
方式によって、景品規制の適用の有無と上限の枠が変わります。購入を条件にしないつもりでも、特典の文言が混じると別の枠が生じるため、最初に特定します。
応募の条件になる商品の価格(取引価額)と、その企画期間中の売上の見込みはいくらですか。
上限と総額の計算に必要な数字は、発注者しか知らないことが多いためです。これを書面で通知する義務を契約に入れる根拠になります。
応募者データを、企画の終了後にどう扱いたいですか(消去、次回の案内への利用、分析)。
企画の運営以外の利用を考えているなら、応募画面での利用目的の明示と同意を、別に設計する必要があるためです。
抽選の方法と立会い者は決まっていますか。記録は誰が、どれだけの期間保存しますか。
公正さを後から説明できるかは、記録の有無で決まります。保存の期間が決まっていないと、苦情の時点で記録が消えていることがあります。
応募作品を募集しますか。主催者はそれをどこで、どれだけの期間使いたいですか。
許諾の範囲と、受託者による編集・掲載の可否を、応募規約と代行契約の双方に反映する必要があるためです。
よくあるご質問
景品の金額が上限を超えてしまったら、どうなりますか?
景品規制は、過大な景品類の提供に対し、行政が景品類の提供に関する事項を制限し、又は禁止できるという仕組みです。上限を超えた景品を出した企画は、この制限・禁止の対象になり得ます。契約では、数字を確認する責任者を発注者に置き、受託者に、法令違反のおそれがあるときに運営を中断できる権限を持たせます。
SNSでフォローとリポストをすれば当たるプレゼント企画にも、景品の上限はありますか?
商品の購入や来店を条件とせず、告知を見た誰もが応募できる抽選企画は、オープン懸賞と呼ばれ、景品規制の適用はなく、提供できる金品に具体的な上限額の定めはありません。ただし、応募の条件に商品の購入が入ると、一般懸賞の枠で考える必要があります。そのほかの法令や、各SNSの利用規約の確認は別途必要です。
応募者の住所や氏名を、運営代行会社に渡してよいですか?
個人データの取扱いを、利用目的の達成に必要な範囲内で委託することに伴って提供するときは、提供を受ける者は第三者に当たらないとされています(個人情報保護法27条5項1号)。そのため委託の範囲内であれば、応募者の同意を新たに取らずに受託者へ預けられます。その代わり、委託する側には受託者への必要かつ適切な監督義務があります(同法25条)。契約で、利用目的の限定、再委託の制限、事故時の通知、終了時の消去を定めます。
景品の発送事故は、運営代行会社と主催者のどちらの責任ですか?
当選者に対しては、景品を約束した主催者が対応を求められるのが通常です。主催者と運営代行会社の間では、契約の定め方で決まります。宛先の誤りや梱包の不備は受託者、配送業者の事由による事故は協議、当選者の届け先の不備は当選者というように、原因別に負担を分けて書きます。
抽選の記録は、どのくらいの期間保存すればよいですか?
保存の期間を一律に定めた規定は、本ページでは確認できていません。そのため、契約で期間を決めます。苦情や問い合わせが出やすい期間(当選発表や発送の後しばらく)は、少なくとも記録が残るようにし、抽選の方法、除外した応募とその理由、当選者の一覧、連絡の履歴を保存する対象に挙げます。
あわせて読みたいページ
本ページは一般的な情報提供です。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月22日)。参考: e-Gov法令検索 / 特定商取引法ガイド(消費者庁) / 表示対策(消費者庁) / フリーランス法特設サイト(公正取引委員会)